夫婦ですが何か?Ⅱ
すでに痛みも伴わないそこに無意識に手を伸ばし指先でなぞれば、くすぐったかったらしい彼がビクリと反応してから困ったような笑みで私を振り返る。
「何?」
「いえ、・・・すでに塞がっているとはいえしっかり痕に残りそうですね」
「ん?あっ、気にしちゃってくれてる~?」
「まぁ・・・人並みに」
「名誉の負傷っす」
ピッと額に手を当て敬礼の様な姿を私に向ける彼に、抱いていた僅かな罪悪感も吹っ飛びそうになる。
そんなに嬉しそうに誇らしくされるとリアクションに困る。
「・・・・怪我に名誉も何もないでしょうに」
「そう?愛する女の人を全力で守ったって・・・名誉じゃない?」
「だったら怪我をしないで守るのがスマートでは?」
「まぁ・・・あの後の千麻ちゃんの格好良さには負けるけどね」
そう言ってクスリと笑う彼の脳裏には勢いで全力の飛び蹴りをした私の勇姿が浮かんでいるのだろう。
あれはなかなか冷静な自分では再現も出来そうにない。
むしろあの瞬間にボロボロの体でよくやったものだと振り返っても驚いてしまう。
そしてその瞬間を思いだせば付属して思いだす直後のシーン。
それを回想しながら背後でしっかりと服を身に纏った彼に声にして響かせてしまう。
「その点、・・・あの時の榊さんは何かのヒーローの様でしたよね」
「ああ、うん。孝太郎は莉羽ちゃん命な奴だし、インドアの根暗に見えても体鍛えてるからね」
「確かに鍛えてなければスタントマンのようにあんな動きは出来ないかと」
「でも突如として新たな事始めたりするからその都度筋肉痛とか怪我が絶えないんだよ」
その発言は思い当る。
まさに私が彼に疑いをかけたそれも結局は単なる筋肉痛の類だったらしく。
本当に彼に対しては偶然が重なって疑惑が強まっていたのだ。
疑われ損。
そして彼女と関係が良好に纏まったとたんに、嫌味にも感じていた私への執着もパタリと止んでしまった程。
まぁ、絡まれようがそれがなくなろうが私には微々たる生活の変化なのですが。
特別支障はないと頭に打ちだしながらすべての身支度を終えキッチンに向かう。
そうして彼の要望であった味噌汁に合わせて和食に統一した朝食を慣れた感じに作り始めて。
たいして時間もかけずバランスの取れた朝食を作り上げるとテーブルに並べた。