夫婦ですが何か?Ⅱ
ソファーに座ってテレビを見ていた彼も、声をかけずともその匂いに反応しのらりとテーブルに姿を移して。
椅子に座り一通り並べられた朝食に視線を走らせると屈託なく微笑んで手を合わせる。
「美味しそう~。俺幸せ~」
「・・・・特別新しいレシピは加えてませんが?」
「うん、でも千麻ちゃん作るご飯本当に美味しんだもん。お浸し一つにも手を抜いてないでしょ?さりげない小技が効いてて飽きないんだよね」
「・・・どうも、」
「・・・・もしかして照れてる?」
「っ・・・早く食べてください。冷めたら美味しさ半減しますよ」
「・・・フフッ、いただきまーす」
勿論含みのある笑みで一瞥。
そうして言葉だけは飲み込んでご機嫌に声を響かせるとにこやかに味噌汁に手を伸ばす彼。
それをチラリと確認し、自分も箸をその手に取れば。
「・・・はぁ、美味しい~。千麻ちゃんの作る味噌汁って何でこんなに美味しいかなぁ」
「本当はスープが飲みたかったのでしょう?」
「ん?アレはなんか・・・夢で食べたような気がして、その記憶鮮明に口にしただけって言うか・・・」
「夕飯はスープにしますか?」
「ん~、いや、もういいや」
熱は冷めた。と言うように笑ってそれを拒否した姿に、もういいなら特別献立に加える必要もないか。とレシピから外す。
さて、では夕飯に何を作ろうか?と脳内で色々なメニューを浮かべていると朝に珍しい来訪のチャイム音。
それもどうやら部屋の入り口の方のそれ。
と、なるとだいたいの来訪者は限られてきて、一体誰がどんな用事で訪ねてきたのかと、それなりに気を張って玄関に歩いて行き。
扉を挟んだままとりあえず確認。
「はい、」
『おはようございます。榊なんですが、』
おお、それこそまだ脳内に鮮明な姿。
つい数十分前には彼との話題の中心であった人が、その話題を感知したように今来訪してきて。
すでに自分に害のない存在。
そう理解しているから何の問題もなく開錠して扉を開いた。
扉を開けばなんら変わらない相変わらず無表情で無気力なイメージの彼が立っていて。
私の姿を捉えるとこれ見よがしに全身を確認してから僅かに眉を寄せた。
その心は?
明らかなるどこか不服の表情に目を細めて視線で投げかけると。