夫婦ですが何か?Ⅱ
相変わらず平常時に感情を見せないこの人。
むしろ嫌味な時の方が感情豊かにその口元を歪ませていたように感じる。
いや、あの対応がいいわけじゃなく、ただもう少し反応豊かにしてくれた方が話しやすいし切り返しやすいのだ。
頭を抱えたくなるような隣人の姿に溜め息だけは必死に飲み込んで、話の軌道修正だと小さく頷いて顔を上げた。
「えっと・・・その、もう住む人は決まっているのでしょうか?」
「うん、その事も含めて今連絡に。今日ね、莉羽の部屋に色々と荷物移したりするからちょっと騒がしいかもしれなくて」
「ああ、了解です。何かお手伝いいたしましょうか?」
「いやいや、一家団欒の休日でしょ?翠姫ちゃんもいるし?」
「・・・・男手は余ってます。いくらでも煮るなり焼くなり、」
「千麻ちゃん!?サラッと人の事レンタルしないで!!」
自分や翠姫はともかく、彼の事なら好きなように扱えと促せば、黙って聞き流せなかったらしい彼が慌てた様子で廊下の先のリビングから顔を出す。
それをチラリ振り返ってすぐに視線を榊に戻すと。
「あの通り、暇してますから」
「でも・・・・正直役に立つかな・・・・」
「ああ、それは保証しかねますが・・・」
「ねぇ、何で2人してそんなに俺に辛辣!?めっちゃ悲しいし寂しい!!」
「そんなの・・・」
「決まってるじゃないですか、」
「「楽しいから」」
綺麗にハモった私と榊の声。
しかも私も榊も無表情というところがミソだろうか。
淡々と言い切られた彼の苦悶の表情にうっかり恍惚とした自分はやはりいじめっ子気質なのだと理解した瞬間。
そして多分この無表情装ってる隣人の男も同類だろう。
いや、この人の場合はまだ彼を根に持っているのもあるのか。
なんせ莉羽さんに手を出されていたわけだし。
そして捉えた榊の一瞬の笑み。
ああ、いじめっ子。
色々と不満携えた姿の彼がようやく私の背後まで来ると話題に参加。
「で?・・・今度はどんな奴?」
「俺の先輩。今日も引っ越し作業手伝いながら自分の荷物運びこむ予定だから。その時にでも紹介するよ」
「・・・・イケメン?女に手早い?」
「どんな確認してるんですか」
「重要でしょ!?これでも美人な奥さんの身の危険心配してるのよ!?うっかり昼ドラ的状況になられても困るんだよ!?」
「それでいくと私の信用度も薄いと感じ取れますが?」
「千麻ちゃんには全力の信頼おいてます」
「だったら心配の不要では?」
「俺の傷痕お忘れですか?」
そんな鬼の首取ったかのように言わなくても。