夫婦ですが何か?Ⅱ
類似した嫌味な対象に対峙してみれば、いかに日々の彼の嫌味が私にとっては安定し愛でるべき対象であったか。
エントランスで彼の声で名前を呼ばれた瞬間から酷く安堵した。
不愉快なグリーンアイを向けられても攻撃的な嫌味をぶつけられても全てが自分には安堵与える物であって。
トドメのようにエレベーターに乗り込む瞬間に強く絡んだ匂いで決壊。
こうして攻撃的にも貪欲にも感じるキスで彼に食いついてしまった結果。
「んっ・・・はぁっ・・ちま・・っ・・千麻ちゃん・・」
「・・はっ・・・はぁっ・・・、」
「ちょっ・・脳みそ溶けそうだって・・・・ってか・・発情しちゃうって・・・・んんっーーー」
一瞬の彼の言い分を聞き入れて、でもすぐに再び呼吸を奪う。
狭い狭い空間で濃密すぎる夫婦の抱擁。
それでもまだ理性的な彼が待ったをかけるように唇を離すと動揺したグリーンアイで私を見つめて宥めてくる。
「マ、マジに・・・どうしーー」
「っ・・・あの人嫌です!!」
「はっ?・・・あの・・あの人?」
「隣の!!新崎!!」
「はっ?何?・・・・何かされた!?」
「っ・・・精神的に・・・受け入れない。嫌悪の対象でイライラするというか・・・・・過去のあなたに奉仕して嫌味に振り回されていたのを思い出すっていうか・・・」
「・・・・そんなに俺は嫌悪の対象でしたか・・・んっーー」
非難と呆れの眼差しを受け流しての口づけ。
もう傍から見てたらイラッと来るほどの抱擁だと思う。
でも傍に人がいないからこそ暴走して、彼の嫌味も今は私の安定剤だ。
逃げる気もない彼の顔を固定するようにしっかり唇を重ねチュッと音を響かせ勢いよく表情読み取れる位置まで顔を離すと。
「今の私は嫌味なあなたも大っーー好き、・・・・・好き」
真顔で彼の顔を覗き込んでの真っ向告白。
挑むように見上げて口にして、念を押した最後の言葉の時には感情的に目が細まった。
彼と言えば羞恥すら追い付かない程驚愕に染まって、綺麗なグリーンアイをチラチラと揺らして数秒。
「・・・っとに・・・・いきなり・・
可愛すぎるっつーの・・・・・」
苦悶したような苦笑いで絞り出された言葉。
参ったとばかりに声は静かに響いたのに、
直後は・・・。