夫婦ですが何か?Ⅱ
絶句。
多分感情的には可笑しくもないだろうに上がった口の端。
でも明らかにショックを示す不動さに一瞬で蝋人形にでもなったのかと思った程。
これ以上の意地悪は本気で落ち込むだろうと理解して、小さく息を吐きだすと榊に視線を戻していった。
戻せば無言で私達の夫婦漫才を観覧していた男が弧を描いた口元をその手で隠している姿で。
含みある感じに私と彼を交互に見て失笑。
「仲良しですね」
「まぁ、程々に?結婚する程度には仲良しですよ」
「しっかりその姿勢継続でお願いします。また奥さん寝取られるのは不愉快で遺憾なので」
これは私にではなく彼に対しての嫌味と牽制だ。
その瞬間だけ鋭く彼を捉えた眼差しは本気孕む物。
避けるように身を横に退けて彼を振り返れば苦笑いで視線を逸らしている。
まぁ、反論も出来ないでしょうとも。
彼の怯んだ反応に満足したらしい榊がフッと緩やかな笑みを浮かべ私に視線を戻すと軽く手を上げ帰宅の合図。
「では、諸々連絡事項でした」
「はい、了解いたしました。長く同居が続くことを陰ながらお祈りいたします」
「どうも、・・・・まぁ、奥様の気分次第だけどね」
苦笑い。
その笑み残してしまった扉を見つめ理解した事がある。
榊は理解あり同調しているだけで、本当は家庭を持ちたいとどこかで思っているタイプではないだろうかと。
でも莉羽さんは・・・。
あまりそういった物は持ち合わせていないだろうなぁ。と、掴みどころない彼女を回想して苦笑い。
そんな事を考えながら身を返せば・・・・・忘れていた。
未だどこか落ち込んだ表情で私を見つめている夫を。
何を本気で・・・、
「・・・・せっかくの良い顔が台無しですよ」
「なんか嫌味~・・・ぜったい千麻ちゃんはそう思ってない癖に」
「私の美的感覚を疑うような発言ですね。心外です。一応目の前の人間が美麗だという感覚は持ち合わせてますよ。・・・・タイプではないだけで」
「おうっ・・・また何か鋭利で毒性の強い物が刺さったよ!?」
「はぁ・・・グダグダと勝手な予測で鬱陶しい・・・」
「っ・・・・」
「いいですか?あなたの持論で物を語れば、あなたが抱くような懸念は私の方がよっぽど大きい物なんですよ」
トンと人差し指で彼の胸を突いて、挑むように見つめ上げると一呼吸置く。