夫婦ですが何か?Ⅱ
朝食の終了と同時に彼の中の過去問題も思考を終幕したらしい。
いや、内心ではまだモヤモヤしているのかもしれないけれど表面的には話題に出すことはなく。
それでも特別様子を崩すわけでもない。
暇になれば食器を片付けている私にちょっかいかけにきたり、翠姫の声がすればすぐに楽し気にその姿を連れに移動する。
そしてリビングに小さな愛娘の姿が存在すれば・・もう。
ほら・・・・家族ですよ?
過去なんて深く掘り下げなくても充分に幸せな家族ですから。
よく似たグリーンアイを見つめあう彼と翠姫の楽し気な姿をキッチンから捉えて小さく口の端を上げる。
でも確かに・・・。
不意に思ったことを無意識に体現するように自分の指先が腹部に触れた。
彼の提案でもっともだと感じ悩む物もあった。
自分で触れたのにその感触に軽く驚き。
でもすぐに意識して手を密着させると、彼と娘を見つめながら首を傾げる。
幸せだけども・・・・上乗せすればもっと幸せよね。
思い描くのは小さな存在。
頭にその姿鮮明に想像するのに、現実の視線がゆっくりとPCを見つめ一気に揺らぐ。
仕事か妊娠か・・・。
困るのは・・・彼に明確にそれを望まれた事。
それによって私の意識も妊娠に傾いて・・・・どこか欲しいと羨望している。
でもリアルも非情に同時進行。
いや、もっと足早に自分を置いていくのが社会だ。
究極の2択だ。
結局は簡単に結論のできないそれに彼に聞こえない程度の息を吐いて終止符。
ようやくその身を落ち着かせようかとキッチンから出かかったタイミングを図ったように部屋に響いたチャイムの音。
リビングに向けていた足を僅かに方向転換するとインターフォンに自分の声を響かせた。
同時にモニターに映る姿に何となく来訪の意味は理解する。
「はい、」
『猫の手も借りたい』
「ええ、その様で・・・。でも我が家の猫は・・・猫は猫でも泥棒猫ですよ?・・・・あなたにとっては」
『フハッ・・ハハッ・・・うん、知ってる。もう取られないから大丈夫』
「ご理解頂けての要望でしたら・・・いくらでも、」
言いながら会話の対象であった彼にチラリと視線を走らせて、当然会話を聞き取っていた彼が不満そうに表情を歪めながらも理解し納得。
翠姫をゆっくり床に下すと、さも面倒だと言いたげにのらりと立ち上がった姿が私の近くに歩み寄った。
「無断レンタル・・・」
「人聞きの悪い。近所づきあいを良好に、僅かばかりにも妻として隣人トラブルのあったあなたの印象を良くしようと考慮しているだけですよ」
ニッと口の端をあげると返されるのは舌打ち。
でも悪意と言うよりは悔しまぎれの。
それを理解しているから微笑み携え玄関に誘導するように手を動かせば、微々たる風を切って彼が私の横を通り抜けた。