夫婦ですが何か?Ⅱ




Side 茜



望まぬ慈善事業。


不本意にも取り付けられてしまった引っ越し作業の手伝いに、世呼び出されたエントランスに向かうため小さな箱の浮遊感に身を任す。


面倒だと思えど彼女に言い返せない俺は尻に敷かれているというのだろうか?


もう絶対に過去の上下関係には戻れないのだと諦めて苦笑いを浮かべれば、静かに動きを止めたエレベーター。


そして扉が開くと入りこむ外気に身を投じ、特に何かを考えるでもなく歩きぬけその姿を捉えた。


ほんの数時間前に自宅の玄関でも捉えた姿。



「孝太郎、」


「お、来たな泥棒猫」


「・・・・・別に盗んでない」


「・・・あー、莉羽が妊娠してなくてよかったぁ・・・」


「っ・・避妊したよ!!」


「知ってるよ。莉羽に根掘り葉掘り詳細にその時の話聞いたから」


「マジかっ!?ってかそれすっげぇ嫌!!何をどこまで聞いたんだよ!?」


「・・・・・・・・フッ・・」



完全に【根掘り葉掘り詳細に】の部分に心が怯む。


彼女の語るそれは本当に気まずいところまで詳細に話してそうで。


それを物語るように含み笑いだけを返した孝太郎の視線が痛い。


羞恥心に駆られた心臓が嫌な跳ね方をするのを感じて、おかしな汗まで噴き出してきそうな。


そうして分かってはいたけれど再確認したこの男は・・・千麻ちゃんと同類。


Sっ気の強い男だと。


俺自身もかなりSっけある方だと思っていたのにいつからこんなやられキャラになった?


そんな自問を脳内でしていれば、豪快に何かが落下する音と焦った人の声。


それにいち早く孝太郎が振り返って動きを見せる。


伴って自分の視線を音の方へ動かしていけば、


『あーあ、』


そんな反応を返したくなるような現状が視界に入った。


無残にも地面に散らばった膨大な冊数の本。


それが入っていたであろうダンボールを手にワタワタとしている男の姿。


どうやら中身の重さに耐え切れずガムテープが緩んだ底が抜けたらしい。


思わぬ事態にパニックになっている姿に孝太郎が近づくと、散らばっている本の傍にしゃがみこんでそれらをゆっくりと拾い上げていった。


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