夫婦ですが何か?Ⅱ
しかも本は散らばったままときたもんだ。
現状に溜め息をつくとようやく作業開始だとばかりに本を拾い上げ重ねていくと。
程々に笑いが治まったらしい拓篤さんも俺に倣って本を拾い上げていく。
その姿を何の気なしに視線走らせ、不意に思ったこと。
「・・・・拓篤さんってリアルな恋人はいるんですか?」
ちょっとした興味。
さすがにプライベートに切りこみすぎだったかと懸念はしたけれど、聞いても差支えないだろうと判断したのは今までの性格と・・・捉えている姿で。
そう、特別な美男子ではないけれど、普通に告白なんかはされてそうな容姿だと思ったから。
でも俺の問いに対して現状は・・・。
「いるように見える?」
苦笑いで両手の本の表紙を俺にかざしての返答。
それに笑っていいのか悪いのか。
複雑に口の端を上げて同じように苦笑いを返せば、小さくクスリと笑った拓篤さんが特別な問題でもないとばかりに言葉を続けた。
「少なくとも・・・今はいないねぇ」
「つまりはいた事もあるって響き、」
「うん・・・まぁ、数えるほどには?」
「それって・・・・同じような趣味の子だったりする?」
「うーん、まぁ、そうだったり、そうじゃなかったり・・・」
思い返すように空気を見つめる彼の脳裏にはどんな子が浮かんでいるんだろうか。
自分の予想ではどうしてもコスプレしたような女子ばかり浮かんでしまっていて。
余計な感覚で夜中なんかもそういうプレイなのかと想像しかける。
「まぁ、どっちにしろ・・・今はひたすら脳内彼女ばかりですよ・・・」
もう馴染んだ乾いた笑い声と眉尻下げた笑み。
回想した記憶は甘くなかったという事だろうか?
拾い集めた本を何とか修復したダンボールに詰め込む姿をぼんやりと眺め、自分も集め重ねた本をその姿に持っていけば『ありがとう』と微笑み受け取り仕舞う。
そして元々の詰め込みよりは軽減した箱をいざ運ばんと持ち上げた瞬間・・・。
いや、・・・訂正。
持ち上げ【よう】とした瞬間にダンボールは1センチほどだけ浮上しすぐにまた地面に密着。
そしてどこか悲しげな苦笑いで俺を振り返って、照れ隠しなのかなんなのか分からない感じに笑う拓篤さんに思う事。
この人なんか放っておけない・・・・。