夫婦ですが何か?Ⅱ
「まさか・・・持ち上げられなかったんですか?」
「な、なんか・・・・車に詰め込んだ作業で手が限界を・・・」
そう言って掌をぎゅっぎゅっと握って開いて繰り返し、自分の非力さに眉尻下げて笑う拓篤さんの手は震えている。
確かにさっきの膨大な量の本が収納されたダンボールはかなりの重量だっただろう。
それを話で聞くところ何箱も往復して車に積んだというのだから、この人にしてはかなり頑張ったのだろう。
そして結果・・・これから車に積んだ荷物を運び出す力も残されていないと。
あーあ。という様な視線で車を捉え、かといって往生していても仕方ないとその身を動かし彼の持ち上げられなかったダンボールを何てことなく持ち上げた。
いや、確かに重いけれど持ち上げられない程じゃない。
でもこれを往復して運んだというのなら確かに腕は痛むのだろうな。
「・・・・荷物は俺と孝太郎が運ぶんで、拓篤さんは部屋でそれを片付ける作業したら?」
「ええっ、そんな悪いよ!!」
「いや、ここで頑張られて転ばれても困るしさ」
言いながら一緒に上に行こうと促して、孝太郎が素早く部屋のカギを投げて言葉の後押し。
ほらね。とばかりににっこり彼に笑って見せると、ようやく言葉に甘える気になったらしくおなじみの笑みを浮かべると俺の歩みに便乗する。
エントランスに入ればもの珍しそうに周りを見渡す拓篤さんが感情のままに感想を口にして。
「いや・・・何回か来た事あるけど・・・・いつみても高そうなマンションだよねぇ・・・」
「そう?一般的な金額だったと思うけど」
「僕の給料じゃなぁ・・・借りて住むのがせいぜいだなぁ・・・。茜君は結婚してここに?」
「元々俺がここで一人暮らししてて、そこに奥さんが加わった感じ」
「はー・・・凄いなぁ。一人暮らしかぁ。茜君も高収入な仕事してるんだぁ」
「いや・・・親の会社で副社長してただけ」
「そっかぁ・・・」
「うん、」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・っ!?」
さらりと告げた自分の役職に彼もさらりと微笑みながら流して、特別驚く内容でもなかったのだろうと黙々と2人で歩いて数秒。
いきなり歩みを止めた拓篤さんがその顔に命一杯の驚きを示して俺を振り返った。