夫婦ですが何か?Ⅱ
あまりに間が開きすぎて一瞬何に対しての驚きなのか疑問に思った程。
ワナワナと指さして驚愕示す彼を捉えながら、片足で箱の底を支えてエレベーターのボタンを押した。
「えっ・・・何?茜君って副社長なの!?自営!?」
「自営って・・・なんか面白い言い方ぁ、ハハッ。まぁ、自営って言えば自営なんだろうけど・・・、それに今はその肩書返上しちゃったし」
「えっ?えっ?返上?副社長辞めたの!?何?降格?」
「うん、自主的にね、」
多分温度差や事実と予測の差がある。
事実としては決して仕事のミスなんかでの降格ではなく、自分の意思でそれらを放棄したもので。
でもそんな事情知らない彼からすればどれだけ深刻な事態があったのか。と、心の中で慌てているのだろう。
それを示すようにどんどん複雑に表情曇らすのを捉え、逆に慌てて補足を口にした。
「あ、あのさ、別に何か問題起こして自主的に、とかじゃないから・・・」
「あ、・・・そ、そうなの?」
「うんうん、何ていうか暗い理由でなく、しいて言えば・・・・愛の為?」
「あ、愛・・・・」
「そう、俺は奥さん勝ち取る為に役職捨てた愛情深ーい奴なんですよ」
ニッと誇らしげに微笑むと同時にエレベーターの扉が開いて静かに乗り込んで行く。
俺の言葉に唖然としていた拓篤さんも我に返って乗り込んで、2人して壁に寄りかかると浮遊感に身を預ける。
そしてどうやら彼の興味を引いたらしい俺の武勇伝。
「凄いなぁ・・・、茜君って本当に何かのヒーローみたいだ」
「フハッ・・・ヒーロー?」
「うん、だってもう生まれ持った容姿で勝ち組で、用意された環境もリッチだしさぁ。その上愛に生きるとか様になりすぎてカッコイイよ。奥さんも王子様的に感じてくれてるんでしょう?」
「・・・・・・・・・・いや、日々『キモイ』『ウザい』『M』とか詰られて生きてますよ」
「な、詰られてるんだ・・・ってか茜くんMなの?」
「彼女のSっ気の前ではMになり下がるしかないというか・・・」
「奥さんSなんだ・・・」
「それはもう快感な程に・・・」
今度は俺から複雑に微笑んで見せれば、同情含みの複雑な笑みを返してきた拓篤さん。
そんな自分の妻事情を話している間も浮上していたエレベーターが静かに動きを止め到着音を響かせた。