夫婦ですが何か?Ⅱ
2人してその瞬間は扉に視線を向け壁に預けてあった体をスッと起こす。
その瞬間に再びずしりと感じるダンボールの重さ。
あと数回はこの感覚を味わうのか。と内心で苦笑いし開いた扉からの外気を受けた。
そして住み慣れたフロアに踏み出して会話も復活。
「拓篤さんは?」
「ん?」
「歴代の彼女達は可愛い子だった?」
「・・・・そこ聞いちゃう?凡人でオタクな俺に聞いちゃう?」
「関係ないでしょ?拓篤さんの人となり見てれば趣味とか関係なく好意を持つ女の子も普通にいるだろうし。その中に美人だっているだろうし、」
「・・・・茜君っていい奴だよねぇ」
「・・・・・なんか・・・拓篤さんって押し倒したくなりますね」
「ええっ!?僕そっちの気ないよ!?」
いや、だから俺もないって。
でも不意にそんなアブノーマルな事口走ったのは、ほんわかとした警戒心のない笑み浮かべて『いい奴』だと口にした拓篤さんがなんだか愛らしかったから。
俺が女だったら迫っていた気がする。
そういう過程あっての一言で、だけどそんな事知り得る筈のない彼は一気に慌てた表情を浮かべて両手を横に振る。
その慌てぶりも然り。
うーん、俺の中にまだ残るSっ気がくすぐられる。
そんな懐かしい感情の浮上でアブノーマルを否定するのも忘れて見つめていれば、その視線すらもアブノーマルに感じ取ったのか慌てた声を響かせる姿。
「ぼ、僕っ、本当に女の子しか興味ないからね!?つきあった女の子達も、
・・・・達って言うか3人くらいだけど
・・・3人って言っても2人は1年も持たなかったけど、」
「拓篤さん・・・だから俺もノーマルですって。そして悲しいかな最初の言い切りに補足が多いうえに切なくなります」
「あ・・うん・・・、俺のリアルな彼女事情でしたぁ・・はは、」
「その哀愁漂う乾いた笑いさえ切なさ倍増する!」
えへへ。という感じに後ろ頭を掻きながら眉尻下げて笑う姿を同じく眉尻下げて見つめて。
でも同時に興味が絞られた言葉の対象。
「・・・・つまりもう1人とはまともに長くつきあってたって事だ?」
「ん?ああ・・・まぁ、・・・えっと・・・大学1年の時につきあって・・・・卒業前には別れてたかな・・・?」
「・・・4年近くは続いてたんだぁ・・・『卒業したら結婚しようねぇ』なんて甘い会話はしなかったの?」
「ハハッ・・・うん・・・何ていうか・・・彼女はドライだったって言うか・・・・」
「結婚願望なかった人?」
「うん・・・一度もそんな会話でなかったなぁ、」
懐かしむように回想している彼に悲哀は映されていないから同情する場面ではないのだろう。