夫婦ですが何か?Ⅱ
話すなら部屋に入ってからにすればいいものを、未だに扉の前で話に花を咲かせて。
すっかり警戒心の解除。
「ねぇねぇ、美人ってどんな感じの?」
「えっ・・・ど、どんな?どんなって・・・」
「ほら、小顔だとか唇厚いとか、」
「え、えっとぉ・・・小顔で・・・あっ、目は大きくてキリッとしてて・・・・睫毛も長くってさぁ・・・」
「へぇ、誰似?」
「誰って・・・・」
芸能人や有名人での例えを期待して、どんなタイプの美人なのかとワクワクしながら返答を待っていれば。
不意に扉の開錠音が耳に入りこんで後ろを振り返る。
そうして捉えたのは自宅の扉が開きそこからスッとその身を出す彼女の姿。
腕に翠姫を抱えて財布を手にしているところを見ると、多分コンビニか何かに用なのだろうと推測。
こっちを一瞥だけした彼女が俺の存在は理解しながら部屋の鍵をかけて歩きぬけてくる。
「千麻ちゃんお出かけ?」
「ええ、うっかり洗濯洗剤買い忘れてて、早く洗って干さないと翠姫のお気に入りのブランケットが乾かないんですよ、」
ああ、それは確かに慌てるね。
愛娘のブランケットへの執着は自分も良く理解していて、ないと機嫌を損ねて扱いに困るほど。
だからこそ焦って意識も散漫に歩きぬけ、そっけない会話の彼女も頷けると。俺の横を抜けてエレベーターに向かう彼女の背中を捉えた。
「・・・・・千麻・・・」
響いた彼女の名前。
その呼びかけに足早だった彼女の動きが止まり、ゆっくり怪訝な表情で振り返った姿の視線は俺に向けてじゃない。
そして呼び止めたのも俺じゃない。
だからこそ一瞬呆けて、その瞬間に完全に脇役に追いやられた俺の状況。
今・・・『千麻』って呼んだ。
名前を確認するような響きじゃなく、その対象を確認するような名称を知っての呼び方。
そしてその声を響かせたのは今の今まで隣で会話していた新たな隣人で・・・・・、
えっ?
もしかして・・・・知りあい?
どこか逃げ腰な括りの関係を持ちだして、確かめるように捉えた彼女は。
あ・・・・久々に見たよ・・・・、
そこまで本気で驚愕示す千麻ちゃんは。