夫婦ですが何か?Ⅱ
「・・・っ・・・あ・・の・・拓篤さん?」
「あっ・・・・ごめ・・・」
ああ、この人もそうとう動揺している。
そして一瞬で姿を消した存在が気になって気になって、俺の呼びかけに反応を返してもすぐにその視線が俺の背後の扉に映る。
今にもまた・・・出てこないかと。
「・・・・・・・もしかして・・・」
「うん・・・」
「・・・あんな感じの・・・・元カノだったりなんて・・・」
苦笑いで否定を求めて言葉にすれば、当然困ったように押し黙った姿がどう返答しようかと動揺を示して。
ああ、大丈夫です。
そんな慌てなくとも理解しての遠回しで逃げの確認ですから。
困る・・・・心底困る。
何が困るかって・・・・。
今更この人に敵意を持てない自分。
恭司の様に攻撃的であるなら自分も敵意むき出しの牽制を示せた。
でも、もうこの人の性格を知ってしまった現状今までの様な嫉妬の敵意を示せない。
「・・・千麻ちゃんが・・・・・美人で可愛いドライな元カノ?」
確信をもっての確認の言葉に、一瞬その目を大きく見開いた拓篤さんが何か言葉を発しようと口を開いて数秒。
そろそろ口の中が乾き始めるんじゃないかと心配さえしてしまいそうなタイミング。
「・・・・・・千麻が・・・・茜君のSな奥さんなんだねぇ」
ああ、だから・・・・困る。
きっと心情的に複雑なんだろうに、困ったように・・・俺に気を遣うように微笑んで。
彼なりに場を和ませるように冗談のように切り返してきた言葉。
その返答だけで根っからの善良さを感じて・・・嫉妬の心はあってもやはり敵意は持てずにいる。
「・・っ・・・マジかぁ・・・・」
「あ・・・はは・・・・・えと・・・・兄弟?」
「いや・・・拓篤さん、精一杯の和ませるための冗談なんだろうけど笑えないから・・・・」
「うん・・・・、えと・・・・なんかごめんね?千麻の元彼で・・・」
「うわぁぁぁ、何かもうっ・・・拓篤さんが悪に染まればいいのにぃ!!」
「ええっ!?あ、悪!?えっえっ?・・・・あ、・・・ま、マントでもつけようか?」
「・・・っ・・・じゃあ、俺全身タイツになる。マンション戦隊のグリーンだし・・・・」
もう精神の崩壊。
お互いに、現状を和ませようとか、動揺を隠そうとか、対応に対してパニックになりすぎて会話も愉快な事になっている。
そして悲しいかな突っ込み役がいないのだ。