夫婦ですが何か?Ⅱ
崩れるようにその場にしゃがみこんで頭を抱えて、その背後で決して他人事でない拓篤さんがおろおろとしているのが気配で分かる。
そりゃあ、そうだよな・・・。
俺としても複雑な心境だけども、この人にしても元カノが隣人でしかも俺の奥さんときたものだ。
そう・・・・隣人。
隣・・・人・・・。
「拓篤さぁん・・・・」
「な、何?殴る?殴る?!」
「・・・・・いや・・・別に今現在殴られるような事してないでしょう?」
「そ、そうなんだ・・けど・・・、ごめんね?ごめんね?・・・なんか美人が怒ると恐いって言うか・・・・茜君の気迫が・・・」
「・・・・すみません」
って、何で俺が謝ってるんだろう?
ってかやっぱりこの人の前じゃあ強気に出れない!!
振り返って言葉をかければ、俺の呼びかけに嬉しいやら、悲しいやら、恐いやら・・・。
何とか必死に和ませようと努力して口の端を上げているのが分かるから切ない。
そして本当は軽く釘を刺そうと喉元まで込み上げていた言葉が自然と仕舞い込まれてしまうほど。
そして代わりに口から零れたのは乾いた『ははは、』と言う笑い声。
別に可笑しくもないのに。
「・・・・・何してるの?2人共、」
不意に響いた声に2人して力なく振り返れば、同じく重いだろうダンボールを抱えた孝太郎が歩み寄ってきていて。
部屋にも入らず、荷物も運びこんでいない自分たちに怪訝な眼差しを向けている。
それに何をどこまで説明していいのかも分からず、むしろ説明して再びこの感覚を回想するのも嫌だ。
どうしようもない、ぶつけどころのない葛藤を・・・。
「・・・ちょっと・・・昼ドラ的大人の事情に打ちのめされてた?」
「・・・・お前得意分野じゃん。他人の奥さん寝取ってるんだから」
「えっ・・・、茜君ってそういう人なの?」
「違うっ!!孝太郎~!!誤解招くような事言うなよ!!ってか軽く引いた感じに見ないでよ拓篤さん!!」
一気に空気の切り替え。
一瞬にして自分の過去の問題に今までの空気が良くも悪くも緩和して、そうして軽く冷静さも浮上すれば気にかかるのは。