夫婦ですが何か?Ⅱ
一向に開かれない扉の向こうの彼女は尋常じゃないくらい紅潮した顔でいるんじゃないかと予想されて。
きっと滅多に見ることのない怯んだ顔をしているんだろうと思う。
そしてそんな彼女に陥ったのが自分が対象である悩みでないという複雑さ。
他の男の存在に。
それも元彼、
それも・・・・・
「・・・ある意味・・・初恋だったんです」
小さく響いた彼女の声。
丁度自分の頭でも同じような言葉を浮上させていたから、一瞬彼女が吹き替えたのかと思った程。
でも違う。
これは彼女の本心。
昨夜から今朝にかけての会話で彼女が彼に対して本気で愛情抱いていた事は理解している。
理解しているだけに・・・、そしてその彼がまた悪意の無い対象であるが為に・・・・俺もまた複雑で。
彼もまた・・・・千麻ちゃんを特別な記憶として刻んでいる。
うわぁ・・・・。
「昼ドラ・・・・」
「・・・・・・浮気願望なんて持ち合わせてません」
「まぁ、・・・普通は持ち合わせてなくて・・・・ああいうのって・・・場の雰囲気と流れだし・・・・」
「浮気なんてしませんって!!現状私はアホみたいにあなた一筋なんですよ!?」
「お・・・おおう。これまた複雑に嬉しいよ・・・。パニック千麻ちゃんだからこそストレートな爆弾投げてくるねぇ・・・」
「ううっ・・・でも・・・拓篤の前で誰かの奥さんしてる自分は恥ずかしすぎるぅ・・・」
「もう・・・複雑すぎてこっちもどうしていいのか分からないよ・・・」
「極論!!変な焼け木杭とかな恋心じゃなく、複雑な乙女心です!!」
「そんな・・・キレながら言わなくても・・・・」
「っ・・・ううう・・・すみません。・・・ダーリン愛してます・・・」
ああ、困る・・・。
千麻ちゃんが壊れてる。
悩んで怯んで怒って・・・滅多にない素直な感情の言葉をあっさりぶつけて。
俺達定番の駆け引きばかりの会話が成り立たない。
扉越しで顔が見えないのはお互いに良かったのかもしれない。
彼女もかなり百面相を繰り返しているんだろうけど、それに反して俺はずっと、呆れなのか、諦めなのか、落胆なのか。
そんな表情を保って僅かばかり口元に弧を保って。