夫婦ですが何か?Ⅱ
どうしようも出来なくなった瞬間に深く息を吐いてから扉にこつんと額を寄せた。
そして現状分かっている自分の意識の報告。
「・・・・俺は・・・・・拓篤さんは良い人だと思う」
「・・・・」
「・・・・過去に千麻ちゃんとどんだけ深い関係であったとしても、変な敵意なくつきあえると思ってる」
「・・・・」
「・・・で、・・・ここからが一番重要」
「・・・・・はい、」
ようやく響いた彼女の応答の声。
俺の声の真剣さを悟った彼女もそれなりに聞き入れる感情を整えたという事だろう。
そんな空気を察知してこちらも息を静かに吐いて気持ちの整理。
「俺は千麻ちゃんを本気で疑うような事しない」
「・・・・」
「千麻ちゃんを信用して信頼してるから、万が一にもなんて予想もしない」
「・・・・」
「だから・・・・千麻ちゃん?もっと俺の奥さんである事に自信と誇りを持って隣に並んでくれない?」
これは彼女の言葉の引用だ。
言い切って口の端が自然と上がってしまった程。
「・・・・恥ずかしいなんて思わないでよ。俺の奥さんである姿をいつでも堂々と晒して。
俺と今幸せだって・・・・堂々と示してよ・・・・」
困ったように眉尻下げて微笑んでの懇願。
多分彼女が抱いている感情に対しては的外れな言い分だったと思う。
分かっているのだ。
彼女が彼に羞恥するものはそういう事ではないと。
でもどうしても引っかかってしまった言葉に、意味は違えどそれを言いたくなったのだ。
例え言葉の意図は違えど、俺との夫婦関係に羞恥するような言葉は言って欲しくない。
そんな・・・・小さな望み。
俺の言葉に数秒の無言。
沈黙の彼女はどんな心境なのかと扉に額を寄せたまま目蓋を下すと、不意に中で動くような気配。
それに閉じていた目蓋を開けると同時に開錠音が響き、合わせてゆっくり扉から身を離すと静かにそっと開く扉。
でも開かれた隙間を測定すれば10センチ程だろうか。
それ以上開かれそうにない扉に疑問を感じながら、隙間を覗き込むように体をかがめれば。
「・・・・・いつからウチのトイレってサウナになってた?」
「・・・・嫌味・・・」
「だって・・・顔尋常じゃなく紅いですけど?」
隙間からようやく捉えた彼女の姿。
気まずそうに眉を顰めて、気丈に振る舞ってはいるけれどその顔は耳まで赤い。