夫婦ですが何か?Ⅱ
でも逆を言えば家族の次にくる候補として彼とは親しい関係なのか?という疑問も浮上する。
でもやましい感情があってだったらわざわざ妻である私にこんな風に宣言するはずもないか。
ああ、でもよくドラマなんかである横取り宣言とか。
そんなあらぬ予測をしてチラリと確認した彼女は、長時間のフライト疲れからなのか欠伸をしてそれを華奢な手で隠しているところで。
考えすぎだ。
この人・・・・何も考えていない気がする。
なんだかフワフワとした雰囲気に依然悪意は皆無で、私のいきすぎた予測も無意味であると結んでしまうほど。
ああ、まぁ、とにかく・・・。
「・・・・部屋にどうぞ、」
「・・・・お邪魔します」
とりあえずここに放置するわけにもいかない訪問者。
あまり会話の弾まなそうな彼女と、彼の帰宅までの時間がかなり不安ではあるけれど。
疲労した体に更に伸し掛かりそうな疲労に今から小さく息を吐くと真っ先に階段に足をかけマンションの中へとその身を投じていく。
背後からガラガラとスーツケースを引く音とコツンコツンと響くヒールの音。
ついてきている事は理解して歩みを進めて、エレベーターホールまで行く重い手首を持ち上げボタンを押した。
どうやら誰かが降りたままそこに存在していたらしい小さな箱が、あっさり扉を開いてすかさず乗り込んで。
次に乗り込んだのは紅さん、そして拓篤の順。
皆が危うい事なくその身を投じたのを確認して扉を閉めれば何とも言えない空気の密室の出来上がりだ。
別に口を閉ざす必要もないのに皆口を噤んで。
紅さんと言えばこの空気にも無関心に壁に寄りかかって自分の毛先を見つめていて。
拓篤と言えば何となく居心地の悪い空気を察知してか苦笑いで視線を泳がせている。
私と言えば常に操作盤に体を向けて、突然の来訪者の存在にどうもてなせばいいのか困惑していて。
そんな中でどうやらしっかり睡眠を取ったらしい愛娘が背中でモゾリと動きを見せる。
言葉にならない声を発した娘の【小さな子マジック】によってか、少なくとも私と拓篤の緊張感は解けた瞬間。
「あ、ああ、翠姫ちゃん起きたねぇ」
「よく寝てたから寝起きいいみたいね」
子供を理由に沈黙の解除。
そもそも緊張する意味もない時間だったのだけども。