夫婦ですが何か?Ⅱ




子供のあどけなさには話題がつきなくていい。


今もそれに救われたように拓篤と沈黙を破って安堵していれば、今まで興味なさげに壁に寄りかかっていた姿がスッとその視線をこちらに移して。


しばらくじっと見つめたかと思うとその身を起こして私の背中を覗き込むように身をかがめた。


正確には・・・・背中の翠姫を。



「・・・・・・・茜の・・・子?」


「・・・・の、予定で産みましたが・・・・」


「・・・・・・・綺麗なグリーンアイ・・・・・・・・顔も・・可愛い・・」


「・・・ありがーー」


「茜にそっくり・・・・・」



一応私の子でもありますけど?


私に似てたら可愛く無いんでしょうか?


そんな感情が浮上した自分は性格がひん曲がっているのだろうか?


でも浮上したそれを誤魔化せずに自分の中でざわざわと嫌な感じがして。


多分これもまた悪意の無い一言だと分かっているから余計に嫌な感じがする。


自己嫌悪・・・。


こんな被害妄想の様な感覚を持ちたくないのに。


でもどうもこの人はストレートすぎて、悪意はなくともチクリチクリと引っかかる。


そしてそんな感情を抱いた原因は言葉もだけど・・・。


翠姫を見て『可愛い』と言った瞬間。


彼に似て可愛いと口にした瞬間に愛おし気に微笑んだその顔に。


カメラの前以外じゃ滅多に笑わない彼女の笑み。


どれだけ彼と親しいかなんて知らない。


むしろこんな風にプライベートで関係を持つほどSANCTUARYのモデルと親しいなんて知らなかった。


興味がなかったからだろ?


そう言われたらそれまでだけども。


自分の複雑な心中や、どうもいつもみたいに受け流せない美麗な彼女の存在、言動。


逐一彼を絡めての言葉にどうしても平常心が保てない自分にイライラしてしまいそうだ。


そんな空気を打ち破るかのようにようやく動きを止めた密室はすぐにその密度を開放して新鮮な空気を流しこむ。


住み慣れ、歩きなれたマンションのフロア。


ようやく少しは圧迫感から解放されたと思い、その一歩を踏み出した瞬間。



「何か・・・久しぶり・・・」



ポツリと彼女の口から零れた響きに思わず振り返ってまで確認してしまう。


捉えた彼女は言葉のままに懐かしむようにフロアに視線を走らせているところで。


ああ、つまりは・・・・来た事がある・・・。



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