夫婦ですが何か?Ⅱ
捉えたのは彼が感情のままに歓喜して彼女を抱きしめた瞬間で。
それはキツク強く抱きしめていると見ているだけで分かってしまうほど。
そしてそんな彼が愛らしいとばかりクスリと笑った彼女がしっかりその手を背中に回して。
そのすぐ傍で拓篤が微妙な表情で、多分私に近い感覚でその抱擁を見つめている。
そんな視線を受けている2人は多分もうお互い以外の存在を忘れていそうな。
ようやくその腕の力を緩めた彼が興奮冷めやらぬ感じに彼女を見下ろし、確認するように頬に触れて。
「うわぁ、うわぁ・・・紅ちゃんだぁ。驚くぅ!!今回は撮影でしか会えないと思ってた」
「せっかく帰国なのに私が茜をないがしろにするわけないでしょ?」
「あっ・・・・昼間の翠君はこれかぁ!?」
「・・・・翠・・来たの?」
「怒ってたよぉ。で、俺のところが疑わしいって詰め寄られて、」
「やだ・・・・読まれてる・・・・」
「うわぁ・・・翠君は恐いけど・・・・でも・・・だけど・・・・、すっごく嬉しい・・・・」
完全に・・・・脇役。
入っていけない空気と会話にただただ傍観するしかなくて。
どう見ても久しぶりの再会を果たした恋人達の様な時間に苦笑いすら浮かばず、滅多にここまでの歓喜の笑みを見せない彼にも軽く苛立って。
私・・・・・・・心狭い。
幼馴染と久々の再会。
そりゃあ嬉しいでしょうよ。
いいじゃない。
静かに笑顔で喜びを黙認して受け流して上げましょうよ。
それが良妻ってものでしょう。
必死にそんな言葉を頭に繰り返し、良妻である事に努めようと目の前の光景を受け流そうとしていると。
未だ歓喜の眼差しで彼女を見下ろしていた彼にニッと微笑んだ彼女。
一瞬。
そう次の瞬間にその唇が彼の唇に重なり2,3秒程密着してからスッと離れた。
あまりに一瞬の出来事に反応を示せた人間はおらず、私と拓篤は唖然と口を開いたまま固まり、
今まで歓喜に満ちていた彼でさえ驚愕の表情で今は固まる。
微笑むのは彼女ばかり。
「フフッ・・・『おかえり・・・・・ダーリン?』」
悪戯な女神の微笑み。
瞬時に焦ったように私を振り返った彼がその表情で必死に何かいいわけを響かせて。
未だに放心状態に近い私は馬鹿みたいに口を開いたまま彼を見つめてしまった。