夫婦ですが何か?Ⅱ





「あ・・うん・・・もう夕飯時だし・・・」


「一緒に食べていけばいいのに・・・」



いや、あなたの家じゃないですけど?



「いや・・・ほら・・・千麻も・・大変だし?」


「じゃあ・・・外に食べに行く?みんなで、」



えっ・・・。



「えっ・・いや・・・えっと、翠姫ちゃんもいるから・・・出るの大変だろうし・・・・茜君も疲れているだろうし・・・」


「じゃあ・・・お寿司でも取ろうか?久々に日本食食べたいし・・・・、茜、ほら、あのお店の・・・」


「あっ・・・うん・・・まぁ、いいんだけ・・ど?」



どうやら拓篤を程よく気にいったらしい女神様の引き止めに、常識的に身内的に私の心情も汲んで言葉を返してくれていた拓篤。


でも押しの勢いは静かに強まって、最終的に提案された出前の声。


促され、慣れた感じに【アレ、ソレ】の表示で店名を共有する彼と彼女のやり取りも苛立ちの元でもあるけれど。


彼女の提案を頭から否定するでもなく、ただ乗るには気がかりな私の反応を伺うように走った視線。


『いいんだけど』に続く言葉として視線に『大丈夫?』と含みこまれて。


その視線をじっと真顔で数秒見つめ直してからにっこりと微笑むと、【良妻】という言葉を念仏的に頭で唱えながら返答。



「いいですよ。拓篤も時間あるなら一緒に食べていけば?それに、久しぶりの帰国でお客様な紅さんに支払いなんてさせられませんから。・・・・特上・・・人数分こちら持ちでいいですよね?茜?」


「えっと、いや、全然俺はいいんだけど・・・その、いいの?千麻ちゃん、」


「えっ・・でも・・・だって・・千麻、そーー」


「まったく問題ございません」



キッチンの前に立っていた拓篤が現状を理解した、ありのままを口にしようとしたのを遮って。


余計な事言うな。的に視線で警告。


そうしている間に密かに手元を動かし、すでに出来ていた調理物を物陰に追いやって。


拓篤だけが事情を知って複雑な表情で対峙して。


複雑だとはいえ許可の出た言葉に彼は紅さんに『良かったね』と苦笑いを浮かべていて。


自分の言葉でその現実を作り上げたくせに静かに蓄積するもどかしい葛藤と苛立ち。


その感情のまま、無意味になってしまった食事の一品を捉えおもむろに手にすると生ごみ受けに躊躇いなく投下。




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