夫婦ですが何か?Ⅱ





次いで他の皿も同様に手にかけ同じ末路を辿らせようとすれば、不意に手首に絡んできた力に阻まれて。


視線を上げれば身を乗り出して珍しく真面目顔で私を見つめる拓篤の目。


でも、それも視線が絡んですぐに静かに消えていく。


緩々と困ったように眉尻を下げて、チラリと生ごみと化した最初の調理物を確認してから戻り。



「・・・・・・捨てるなら・・・・僕が貰ってく、」


「・・・・無理しなくていい」


「・・・せ、生活費・・・浮くし・・・」


「・・・・・フッ・・・こんな微々たる一品の料理に生活費浮かすほどの価値はないと思うけど?」



拓篤らしい取ってつけた下手な理由。


でも今はその下手な理由に苛立ちが緩和されて、その言葉に甘んじて皿をキッチンに戻すとタッパーを取りだしてそちらに変更。


無言でそれを手渡せば、後ろを意識しながら拓篤が受け取り小声で『ありがとう』と告げて自分の荷物に忍ばせた。


そんな流れの中、小声にならなくとも多分こっちの会話なんて聞こえていなかったであろうリビングの2人。


居心地悪そうにしていた彼も時間が立てば順応して、今は懐かしむように彼女との再会に自然な笑みを浮かべていて。


その輪の中に翠姫も混じって時々響く笑い声。


和気あいあい。


楽し気な空間だ。


自分がいるこのキッチンを除けば。


私も何も考えずにその輪に加わって、楽し気な空気を後押しすれば本当に良妻という響きに値するんだろう。


でも、そんな出来た意識よりも上回る厄介な感情が、自分の印象を悪になるとしてもキッチンに置くことを命じて。


それに逆らいたいでもなく、むしろ居心地がいいと閉じこもる。


そんな私を気遣ってくれるのは同じようにこの空間に居場所を見いだせない拓篤ばかりで。


今もカウンター越しに対面して、私の様子を心配そうに覗き込んでいて。



「・・・・・・大丈夫よ、」


「う、うん・・・、」


「・・・・引き止められたんだし・・・会話に交じってきてもいいのに」


「いや・・・だって、なんか楽しそ・・・・・、じゃ、なくて・・・その・・・昔話に花が・・・」


「いいわよ。本当にあの2人【楽しそう】だし」



咄嗟に下手に言葉を差し替えた拓篤に『気を遣うな』と差し替えた言葉をあえて使用し、対象となった2人をチラリと確認し目を細めた。




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