夫婦ですが何か?Ⅱ
その後も私を抜きに、でも時々気を遣いながら盛り上がるリビング。
その輪に入った記憶を上げれば・・・多分一度。
それこそお寿司が来て、さすがに一緒に食べなければ角が立つであろう場面だけ。
渋々その輪に加わって、必要最低限以外はその口は食事にだけ活用して。
そういう訳にもいかない、むしろ食べるより会話に活用した彼と紅さんだけが【喜楽】の感情を持って食事をしていると思う。
拓篤も少しばかりは持ち合わせているのだろうか?
でも、どちらかと言えば私寄りに位置して、気を遣ってその場に居てくれる分居心地は悪いだろうと軽く申し訳なくなる。
それでも合わせて笑顔で程々に会話に参加して、時々私を見ては眉尻を下げた笑み。
『大丈夫?』の意を重々に感じて、この時ばかりは自然に口の端が上がる。
のに・・・、
そんな微々たる自分の心の葛藤の緩和をぶち壊すような彼と紅さんのやり取りが耳に入って。
「茜・・・・卵頂戴・・・」
「えっ、嫌だよっ・・・って、もう盗ってんじゃん!酷いっ、紅ちゃん酷い!!」
「だって・・・・この卵が私に食べてほしいって・・・」
「どんな理由!?ってか、本当に酷いよぉ!!」
子供かよ。
そんな仲良しカップルのやり取りの様な光景をみて、本気なのか軽い冗談交じりのそれなのか良く分からない彼の反応に心で舌打ち、後、悪態。
この若干テンションの高い声が不快でならない。
ああ、それこそ・・・こんな風な不快感を秘書時代に彼に感じていたと懐かしい日々まで浮上して。
今も『酷い』と繰り返す彼に眉根を寄せると『煩い』とばかりに自分の卵焼きをやや雑に彼の桶に放りこんだ。
これで済む話だろう。と、
投下してしまえばもう食べることに集中を戻して、当然その感謝しにくいだろう卵の投下に彼の視線がこちらに移っているのは気がついている。
それでも視線を絡めることなく、サクサクと食べ進めて最後の一貫を口に放り込んでごくりと飲みこむと、その場の余韻を楽しむことなく立ち上がりキッチンに向かった。
シンクに自分の食べ終わった桶を置いて、動作を止めることなく水を流すとスポンジを手にして。
感情も一緒に洗い流すようにキュッキュッと音を立てて洗っていれば、スッと隣に並んできた存在に視線を動かす。
その瞬間は挑むように移して、でも捉えた姿にすぐに威嚇の解除。