夫婦ですが何か?Ⅱ
「えっと・・・千麻?」
「あっ、ごめん・・・」
うっかり忘れて放置してしまっていた存在。
自分が呼び留めていたくせに失礼な話だと、反省しながら更にその身を近づけ。
彼の手いっぱいになっている紙袋をそっと自分の手に移し返すと玄関に歩きだした。
「持つの手伝うわ」
「い、いいよ、いいよ・・・」
「どうせ隣までの距離よ?」
「だ、だったら尚更・・・この位の距離大丈夫だって・・・」
「遠慮しないでよ」
「だっ・・・でも・・あのっ・・・・っーーー」
今更何を遠慮しているのか。
そんな感じに見送りを強行しようと玄関の扉に手をかけた瞬間。
背後から伸びた手が自分の頭の横をすり抜けて扉にしっかり密着して。
その事に驚いているうちに背中に自分以外の熱が寄った。
でも触れたわけでなく気配だけ。
そして耳に入る息遣いでその唇が酷く近い位置にあると把握する。
自分の頭の横に。
あれ?
と、思った頭に響く、
「・・・・送られたら・・・・連れ込んで虐めるよ?」
低い・・・拓篤らしからぬ男っぽい口調と声。
一瞬その声に、言葉に呑まれて不動になって、理性が激流のようになって戻った瞬間に確かめるように振り返った。
「っ・・拓ーー」
「っーーーー羞恥心で・・・・死ぬ・・・・」
身を捩ってその姿を捉えるべくやや視線を上にしていたのに、実際捉えたのは我が家の廊下の天井ばかり。
瞬時に消えた姿に『神隠しか?』と馬鹿な発想までしたタイミングにその声が下から響いて視線を落とすと。
頭を抱えてその場にしゃがみこんで悶絶している拓篤の姿に失笑。
ああ、やっぱり・・・。
「・・・・ちょっと・・・演じてみた?」
「ご、ごめん・・・・茜君や孝太郎見てたら僕も出来るかな。って思ったけど・・・・キャラじゃなかった・・・」
「うん、でも・・・・ちょっとドキッとしたけど?」
「うわぁうわぁ、いいよいいよ!そんな気を遣わないでっ。恥ずかしいぃ・・・、ヒーローぶってごめんなさい」
本気で羞恥心に満ちているらしい拓篤の顔は尋常じゃないくらいに赤い。
軽くその目が潤んでいるのは気のせいか?
一向に立ち上がらない姿に一息つくと、同じ目線に合わせるように自分の身もしゃがみこませて向かい合う。