夫婦ですが何か?Ⅱ
捨てられた犬・・・とは違うか。
ちょっとした秘め事を暴露されて過剰に羞恥してる子供みたいな。
「・・・・・本当に・・・ドキッとしたわよ?」
「・・・・・・・千麻は・・・優しいね」
嘘偽りなく、あの瞬間滅多にない男の拓篤に女としての感情で心臓が跳ねたと思う。
でもそれは恋とか大それた物じゃなく、映画やドラマで感じる動悸の様な。
ギャップ萌え?
そんな感じ。
気がつけば無意識に拓篤の顔に伸ばしていた指先。
それに意識したのは自分の指先が眼鏡の金属触を得た事で。
何がしたかったのか、自分でもよく分からず混乱した瞬間に、同じように困惑した拓篤が息を飲んでからその場に放置されていた荷物をガサリと掴むと立ち上がって。
「お邪魔しました、」
「あっ、」
気がつけば自分の手からも離れていた荷物も回収され、逃げるように玄関扉からすり抜けようとしている拓篤をしゃがんだまま振り返って見上げて非難の声を上げようとその口を開いたタイミング。
「言ったことは・・・否定できない・・・から」
響いた言葉に自分の声は見事打ち砕かれて。
一瞬何を言われていたかと回想して更に不動。
そんな私の様子を伺うように一瞬だけ振り返った拓篤の顔はまだ赤いのにその目は・・・・・男っぽい。
驚愕の眼差しだけまっすぐに向けて馬鹿みたいに固まっていれば。
「・・・・・・・・おやすみ」
響いた声と閉まる扉の音。
パタリと密室になったその場で無意味に数秒停止して、それでも施錠しなければ。と、のそり立ち上がり鍵とガードをガチャリと響かせ。
そして・・・、
無機質で冷たい扉にトンと真正面からその身を預けた。
「っ・・・・ど、動悸~・・・・ギャップがぁ・・・」
ああ、馬鹿正直な心臓よ。
壊れんばかりにその速度を上げて自分の呼吸を危ぶめてくる。
苦しい・・・熱い・・・。
うわぁ・・・・、なんか・・・・
「死にそう・・・・」
「・・・・【救心】でも買ってこようか?」
「っ・・・・」
「ああ・・・・それとも、・・・・急激な熱さまし?」
フッと鼻で笑う様な感じに投げられた嫌味。
いつの間にか腕を組んで壁にその身を預けながら私を見つめていた彼。