夫婦ですが何か?Ⅱ
自分でも『何を今更』と、思ってはいる。
だけども、
「ちょっ・・すみません」
「えっ・・、ちょっ・・・千麻ちゃん!?」
「すぐです!5分です!なんなら30秒でも」
「30秒って・・・そんな秒タイムのシャワーに何のメリット!?」
「っ・・・プライドと恥じらいですよっ!!」
いそいそとベッドを下りようとする私を混乱しながらも腕を掴んで引き止める彼に、『ああ、もうっ』と殆ど逆切れの様な勢いで振り返る。
そして言い放った言葉に彼が唖然と不動になって、瞬きも忘れて双眸を見開く。
だって、だから・・・今日の私は色々と自意識過剰なんですって。
少しでも自分を取り繕いたくて、少しでも彼女より良く見てほしい。
紅さんより私の方がいいのだと。
あなたのそれも嫉妬なら、私のこれも嫉妬からのプライドです。
それに、ただでさえ、
「な・・・何?プライド?」
「・・・・・・・あなたは入浴済みなのに私はまだなんて嫌です」
「えっ?えっ?・・・い、今までそんな事気に・・」
「っ・・もうっ、・・・いいから行かせてくださいよ!!私の微々たる乙女心汲めっ!!馬鹿っ!!」
言いながら近くの枕を掴んで彼に投げつけると逃亡。
扉を開ける時には『え、え~・・・』と未だ困惑気味な彼の力ない声を聞き入れて。
彼には見えない自分の顔を耳まで赤くして浴室まで疾走。
なんて馬鹿な。
彼との初めて時でさえこんな乙女な恥じらいなど抱いた事がないというのに。
でも・・・今日は無理。
少しでも印象よく見せたい。
特別な夜でもないのに。
馬鹿げた乙女心からの突発的な行動に呆れているのに、望み通りに浴室にある自分に安堵もする。
動悸が激しいと感じながら不意に目の前の鏡を見つめれば赤い赤い自分の顔。
それを隠すようにコックを捻ってお湯を出して、熱気によって曇っていく鏡にフゥッと安堵の息を漏らした。
その身に心地よいお湯を浴びせればさすがに30秒では切り上げられず、髪から体から泡に包んではお湯で流して。
肌に付着している泡を流しながら触れていた瞬間に思いだす。
「・・・・・・綺麗・・だったな・・・」
彼女の年齢を感じさせない白く透き通るような肌を。
私より歳を重ねているのにそうは感じさせない姿を。