夫婦ですが何か?Ⅱ
Side 千麻
ーーー数十分前ーーー
作りは似ているけども慣れないキッチンに立って包丁を握る。
その隣では拓篤が微力なりとも協力しようと並び立って。
不器用な手つきで指示されるままに昼食を作るべく奮闘している。
そんな姿を時々確認し、小さく口の端をあげて自分も作業に意識を戻して。
懐かしい。
そんな感覚を抱いた瞬間。
「なんか・・・ちょっと懐かしいね」
「・・・・私も思ってたとこ、」
「よく休日とかこうやってご飯作ってたねぇ」
「まぁ、・・・こんな良い部屋ではなかったけどね」
「は、ははっ・・・学生だったし・・・」
「もっと悲惨に散らかってたけど、」
「数日すればこの部屋もそうなるかも・・・」
呆れた。
そんな視線で今度ははっきり拓篤を捉えると、気まずそうにこちらに微笑み下す姿に困ったように笑ってしまう。
本当に・・・変わらない。
穏やかで、ささやかで、・・・・居心地が良くて。
もし・・・、
不意に浮かびかけた仮定の予想をすぐに自ら掻き消して調理に戻る。
そんな予想をするのはイケない事の様で、今更な事だと沈めて埋めて。
今掴み取った幸せの象徴である翠姫に視線を走らせて集中の変更。
私と彼の子。
「翠姫ちゃんは可愛いね、」
自分が愛おしく見つめていたせいか、賛同するように響いた拓篤の声。
反応して振り返れば拓篤の視線は翠姫に向いていて、捉えたのは柔らかい笑みの横顔。
それを数秒見つめてから自分の視線も翠姫に移して。
「・・・・彼に似て・・・綺麗なの」
「僕は千麻に似てると思うよ」
「・・・・なんか、下手にも慰めてフォロー入れようとしてる?」
「そっ・・そうじゃなくて本当にっ・・・、た、確かに茜君にも似てるけど・・・」
「フッ・・・ごめん。うん、分かってる。拓篤はいつだって悪意がないことくらい」
分かってるの。
なのに・・・今の私は心が捻てて、私の方が悪意の混じった切り返しをして嫌な女になっている。
拓篤にまでこんな被害妄想はぶつけたくないのに。
自分に嘲笑。
癒しを求めて無理矢理ここに押し入ったのに、こんな風に拓篤までも追い詰めるならやはり出ていこうか。
そんな意識もチラチラ揺れる。