夫婦ですが何か?Ⅱ




気がつけば無駄な葛藤もなく砕けた自分であったと思う。


綺麗に消化したわけではないけれど、拓篤の前の今この瞬間は醜悪な自分は引っ込んだように感じる。


だからこそ軽く口の端をあげて見せると、ふわりと柔らかく微笑み返されて。


逸らすことなく視線を絡めていれば、さすがに照れくさくなったらしい拓篤が僅かに紅潮してそれを外す。


そして移動して捉えた物に『あっ、』と表情を切り替えて、



「翠姫ちゃん携帯持ってるけど・・・・」


「えっ!?」



いいの?


そんな風に指さして私に確認を入れてきた拓篤の声に反応し、焦って捉えた翠姫は楽し気に自分の携帯の画面を弄り倒している。


しまった、ロック設定にしていなかった。と焦ってその身を動かすと、その間も好奇心の塊である愛娘の奇行。



「あっ、危ないーー」



積み重なっているDVDのケースに手を伸ばしているのを見て、拓篤も慌ててその身を動かして。


拓篤の声に自分の意識もそちらに移行。


咄嗟に崩壊と雪崩を防ごうと手を伸ばしたけれど、その量と不規則な崩壊に成す術もなく。


同時に焦って駆け寄ったが為に他の物につまずいてよろめき倒れてきた拓篤の上乗せ。


ガラガラと無情に響く崩壊の音を耳にしたのは床に倒れ込んで、重みと痛みに眉を顰めた瞬間。



「・・・っ・・いっ・・」


痛い・・・。


「・・・っ・・ごめっ・・・千麻、大丈夫?・・・痛い?」



地味に感じる痛覚に思わず小さく声を漏らせば、僅かに身を起こした拓篤が苦笑いで見下ろして。


その微々たる動きでも第二派の雪崩が起きそうな音に不動になる。


でも・・・、



「・・・っ痛いに・・決まってる、・・・重いし・・・焦りすぎだし、・・・何か興奮してない?」


「ん、いや・・・なんか・・・千麻いい匂いするなぁって・・・思って・・・」



感じるままに非難の言葉を弾いてみせて、その間に感じた違和感もプラス。


人畜無害そうでも異性と密着すれば男としては正直なのだと理解する反応に、今更羞恥するでもなく突っ込んでみると、これまた馬鹿正直に肯定を返した拓篤。


匂いって・・・。


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