夫婦ですが何か?Ⅱ
別れてから数年。
私は変わらない拓篤に安堵していたけれど、拓篤からしてみれば数年経っても変わっていない自分をあえて突っ込まれるのは羞恥する部分だったのだろうか?
そう意識が走れば悪戯に人の趣味や秘め事に触れるのはよくないのかと、手に持っていた2つを重ねてその身をかがめる。
そして足元に崩れている物をとりあえずの処置として重ねていき、
「とりあえず、今は適当に重ねて後でしっかり仕分けして片付けましょう。お昼食べてから、」
「うん、・・・うん、ありがとう」
表情は捉えていないけれど、その声音の柔らかさで気を悪くした感じはない。
それを感じて小さく安堵すると、翠姫の悪戯する本も取り上げて積み重ね、とりあえずの収拾。
一つ一つ静かに積み重ねる毎に安堵する。
心が落ち着く。
「一家に一台千麻がいるといいよね、」
「・・・・・・何それ、」
「ん?ご飯も美味しいし、片付け上手だし」
不意に投げられた言葉に振り返ると、同時に振り返った拓篤と視線が絡んでクスリと笑われる。
まだ赤身残る頬の笑みは可愛らしいと感じて、それと同時に向けられた賞賛。
ざわりと胸が騒ぐ。
でも悪い意味じゃなく、
この弾みをつけた心臓も不快じゃなく。
どちらも・・・歓喜だ。
「一家に一台って・・・ドラ〇もんじゃあるまいし」
「ああ、あるといいよねぇ。・・・・あっ、でも、ドラ〇もんあっても意味ないのか・・・あれって絶対に秘密道具別売りだよね?」
「そうね、ある意味ドラ〇もんは自分の意思で喋って動く道具入れにすぎないと思うわ。それどころか食べて寝るって段階でお金のかかる居候よね」
「あはは、僕達って夢のない大人だねぇ」
「拓篤なんて大人になったの〇太くんみたいなのに、」
「えっと・・・・・『千麻ちゃぁ~ん』?」
「ブッ・・・・『何だい?拓篤君』」
「『ちっとも片付かないんだよぉ。どうしよう?!』」
「『そんな時は・・・、ごみ袋~』」
「やめてっ!!」
「あははは・・・・」
馬鹿・・・。
本当に馬鹿すぎるやり取りで・・・・心地いい。
安心する。
感じてしまう。
この場所は違うのに、
この場所じゃないのに、
自分の必要性を小さくも確かに。
生暖かく、穏やかで、優しく・・・。
苦しく無い。
楽しいばかりの。
伸ばした羽が『もう少し』と粘っている。
休ませて・・・、
もう少し。