夫婦ですが何か?Ⅱ
Side 茜
どこか気まずい心情のままエレベーターの浮遊感に身を任せて。
早く会って抱きしめたいという感情の反面、昼間の電話のパンチもデカい今、あの秘書モードは堪えるかもしれないという一抹の不安もある。
まず、どう帰宅していいのかも馬鹿みたいにシミュレーションしてしまうほど迷走していて。
壁に寄りかかったまま眉根を寄せて思案していたけれど脱力。
「ダメだ・・・分からん」
どうしても気がかりな現状打破すべく、いつもよりは早めの帰宅をしてきたというのに解決策は不在のまま目的地に到着。
そして今エレベーターの扉も開かれ、その身を出しながら溜め息交じりに歩みを進める。
どうしたものか。
そして昼間の事も追及すべきか。
そんな選択にも揺れながら自宅の扉の前に立ち一瞬の不動。
後に意を決すると自分の手を扉にかけ普段通りに扉を引いた。
瞬間。
「っ・・・・」
「っ・・驚いた。・・・おかえりなさい」
「えっ・・と、・・うん・・・ただい・・ま?」
あれ?っと思うほど肩すかし。
扉を引いたと同時に、どうやら逆に押したらしい彼女が自分の中に飛びこんで。
お互いに驚愕の表情で対峙するも、彼女の方から出迎えの言葉を受け返答。
それも朝の様な気配もなく、
もっと言えば・・・普段通り?
自分の不安との温度差に困惑して彼女を見つめていると、
「あの、ちょっと出たいんですが、」
「あ、・・うん、ごめん。何?コンビニ?」
「いえ、隣に、」
「っ・・・に、新崎?」
「・・・・・新崎さんなら今出張中で留守じゃないですか。拓篤のところです」
勿論、新崎の不在を知っていての引用。
咄嗟に拓篤さんの部屋じゃないといい、という意識が働いての馬鹿な発言。
その表情も下手くそな笑みだったと思う。
彼女も怪訝な顔でその用事を示すように手の中の調味料を示して補足。
「拓篤に夕飯を作っていたんですが調味料がなくて、我が家のはすでに出来上がってお風呂もはってありますから」
「あっ、うん・・・」
「紅さんはまだ帰宅してません。でも夕方には戻ると言っていたのですぐ戻ってくるかと」
「そ、そうなんだ・・・」
「では、調理完成させてきます」
「っ・・千麻ちゃんっ、」
横をすり抜けて隣に向かう彼女を思わず呼び留め言葉に迷う。