夫婦ですが何か?Ⅱ
不思議なくらいに緩和している彼女。
ここまで平常な姿で対峙されると、全部あの事は夢だったんじゃないかと思うほど。
日中どんな心境の変化があったかは知らないけれど、少なくとも今の彼女に乱れがない。
その事実に自然と交わす夫婦漫才な会話と零れた笑み。
心の中の鈍い色の感情が薄れていく。
「作り終わったら戻ります。先にお風呂でもどうぞ、」
「うん、了解」
何の疑いも嫉妬もない笑みで自然と送りだせたと思う。
実際に自分の中では穏やかな彼女の姿に対する安堵と歓喜しかない現状。
そのまま視線を自宅に向け、靴を脱ぎかけている背後で扉が閉まって薄暗くなっていく。
でも、次の瞬間にはパッと光を取り込んで、瞬時に反応し振り返ったその身に心地の良い力の接触。
思わず口の端が上がって背中に感じるぬくもりの対象に心臓が跳ねる。
「そんな可愛い行動取られると・・・・ちょっとパクリといきたくなるんだけど?」
「・・・・・・・忘れていたと思いまして」
「ん?何を?」
飛びこんでそのまま背中に張り付いてきた彼女の愛らしき行動。
馬鹿みたいに反応し心臓が浮れた速さで脈打っていて、どんな表情をしているのか確認するように首だけ捻っての会話。
そして投げられた言葉と、緩んだ手。
そのタイミングにその身を彼女に返して対峙させたとほぼ同時、スッとネクタイに絡んだ彼女の指が強引な力で引きよせて。
でも、不快じゃない。
甘ったるい。
「・・・・・おかえり、ダーリン」
「フッ・・再入荷したの?」
「・・・でも、また在庫切れです」
「いいよ。・・・逆に楽しみだから、」
触れ合った唇をさして離していない距離での会話。
多分、負けず嫌いな彼女のリベンジのキスに小さく笑って頬をくすぐって。
今すぐにでも抱き上げてベッドに沈めたいくらいに欲が疼く。
凄く・・・・・困るくらいに好きだ・・・・。
今にも零れそうな感情が満ちて、溢れて。
もう一度唇を重ねようと距離を埋め始めれば、彼女のお得意。
「・・・フッ・・・【出直し】?」
「・・・・調理中なので、」
「じゃあ・・・【待て】?」
「それは・・・あなたのお行儀次第かと」
「じゃあ、良い子に忠犬ハチ公の如く帰り待ってるから」
「・・・・馬鹿ですね」
「だから・・・千麻ちゃん馬鹿なんだって」
呆れた。と声の響きに乗せて、それでもすぐに小さく弧を描いた口元に歓喜する。
やっぱり・・・・笑ってる顔が好きだよ。
千麻ちゃん。