夫婦ですが何か?Ⅱ






「なんか・・・・昨日からすみませんでした。悩みすぎて迷走してて・・・自分の問題なのに、」


「いいよ。・・・・少し・・落ちついた?」


「・・・・拓篤の・・・天然ヒーリングパワーでしょうか?」


「ああ・・・、拓篤さんってマイナスイオン発生してそうだよね」


「フフッ、本人にそう言っておきます」



彼女の言葉に同調してみせると、軽く笑いながらその身を離して。


再度玄関扉を開く姿を穏やかに見送る。


不安の閉幕?


いや、そう簡単に解消はしないだろうけども、穏やかな現状はそれに浸ろうとようやく室内に身を収めていき。


寝室のクローゼットでスーツを脱ぐと、彼女の提案の通りに先に入浴を済ませようと浴室に向かう。


心軽く、疲れも一緒に流すように髪も体も洗い上げ、脱力するように湯船に使って息を吐いて。


ぼんやりとしながら平穏の温もりにも浸かる。


このままがいい。


穏やかで、些細な言葉遊びで馬鹿を言って。


これが、当たり前だけども最高な【いつも】じゃない?


千麻ちゃん。


でも安心したら一気に・・・、



「眠い・・・」



緊張感の解放と、心地よいお湯の温もりに一気に眠気が浮上して。


目を擦って耐えて阻んで、それでもぼやけていく視界。


意思に関係なくウトウトして、自分では気づくことのないまま睡魔の勝利。


こういう時の眠りって不思議だ。


自分では『一瞬寝てた』という感覚なのに、実際は深く、一瞬は数分であったりして。


意識が覚醒したのは突然で、ガクンっと頭が下がった事で驚いての覚醒。


一瞬混乱しながら浸かっているお湯の水面を見つめ、すぐに意識を更に覚醒させるように手で顔を擦るように覆っていく。


やべっ、一瞬寝てた。


まさにそんな事を思った瞬間の違和感と、耳に入りこんだ声。



「おはよう・・・」


「・・・・・」



あれ?


まだ夢の世界でしょうか?


そんな現実逃避に走りたい現実の非情さ。


響いた声は馴染みがあっても千麻ちゃんとは違う。


そして、現在直面している状況を事細かに語れば、俺は入浴中で湯船に浸かっていて、声の主は俺の真正面に存在する。


つまりは対面している相手も同じく湯船に浸かっているのだ。


当然・・・裸で。


一瞬、激しすぎる混乱でまともに思考が働かず、対面する相手と無言で睨めっこ。



< 447 / 574 >

この作品をシェア

pagetop