夫婦ですが何か?Ⅱ
扉が軽く開いてすぐに閉まる。
一瞬だけ差し込んだ外の明かりがすぐに細くなって途絶えて。
掴んだ瞬間に崩れ落ちるようにしゃがみこんだ彼女を上から見下ろす。
ざわりと胸が嫌な音を立てて。
記憶の回帰と鳥肌が立つくらいの最悪な嫌悪感。
デジャブだ・・・。
嫌だ・・・。
蘇る嗅覚は消毒液臭い。
類似して被る。
あの時蹲って絶望した彼女に、
「っ・・・千麻ちゃーーー」
「血の繋がりある姉弟でも・・・禁断愛でなければ一緒に入浴はしないかと、」
「・・・・えっと・・・、うん、・・・はい、」
馬鹿だと思う。
響いたのは明らかに俺を非難し嫌悪も混じる嫌味な言葉なのに、嫌味の健在にあの瞬間ほどまでは壊れていないのだと安堵した心。
それでも問題が改善したわけではなく、一歩間違えればその瞬間にも落ちかねないような。
何より・・・・彼女の顔を捉えられていない今が怖い。
しゃがみ込んで、頑なに俯く彼女の表情は見えない。
つい数十分前には同じこの場所で、彼女の甘さに浸って歓喜して。
なのに、今はその記憶も薄れるほどの失意。
肌を伝う水滴が鬱陶しく感じ、外気に触れて体が冷える。
心も・・・。
「・・・・・本当・・・仲がいいですよね」
「・・・えっ?」
「・・・・お互いに理解し合って、息も合って・・・、」
「千麻ちゃん?」
「紅さんなんて・・・私より年上なのに全然綺麗で、・・・料理も出来て、あなたに甘くて優しいし、子供にも優しいし・・・」
「ねぇ・・・ちょっと待って、」
「あなたも・・・・楽しそうで、・・・私がいなくても彼女がいれば大丈夫なんじゃないでしょうか?」
「っ・・・」
感情爆発の勢い。
少し強めの力で掴んでいた腕を引いてようやくの対峙。
やっと絡んだ目は揺れて潤んで。
一つ瞬きすれば溢れて零れ落ちそうな。
なのに、彼女の必死さを感じる強気な表情に逆に悲痛さを垣間見て。
だけど、
だけどさ、
ちょっと、今の一言は・・・、
「本気でそんな事言ってるの?」
「・・・・」
「俺に千麻ちゃんが必要ないって・・・本気で思って言ってる?」
「・・・・」
「黙んないでよ。・・・・っ・・分かんないって・・・、どの位必要だって・・・、好きだって言えば千麻ちゃんに届くのか分かんないよ・・・・」
「・・・・・っ・・そんなの、」
「・・・」
「そんなのっ、・・・私も分からないんですよ!!」
あっ、零れた。
怒りか悲しみか分からない苦悶の表情の彼女の目から。