夫婦ですが何か?Ⅱ
眉根を寄せて、必死に上げている眉尻が震えているのが分かる。
声も荒げたけれどその心情は酷く傷ついて泣いているような。
零れた涙も証拠隠滅のように素早く拭い去った彼女が、小柄な体を大きく見せるように、挑むように睨み上げて。
「も・・・いいです。お姉さまと仲良くどうぞ、」
「っ・・・ちがっ、だって・・・待ってよ!!俺紅ちゃんを好きじゃないんだよ!?今だって俺が寝てる間に紅ちゃんが勝手に入ってきただけで。紅ちゃんだって悪意はなくて天然で、紅ちゃんはーーー」
「っ・・紅ちゃん紅ちゃん、煩い!!鬱陶しい!!どんだけ大好きか知らないですけど、大の大人が甘えたような口調で【ちゃん】づけするな!」
「千麻ちゃんだって【ちゃん】付けじゃん!!今更何がいけないんだよ!?」
「っ・・・・」
「・・・・・・な、何?」
勢いよく泣きながらキレた彼女の言い分に、自分も同じ呼び方をされているだろう。と反論を響かせた瞬間。
静止した姿、大きく開かれたその目が動揺に揺れて。
その一言に何か効力のあった様に固まった彼女にこちらの勢いも軽減。
むしろその変化に焦って、顔を覗き込んでの様子伺い。
身をかがめて至近距離で視線を絡めた直後。
パッと彼女の手が口元を抑えて眉尻を下げて。
「っ、どうしましょう?」
「はっ?」
「・・・吐きそうです」
「・・・っ・・えっ!?はっ?何で?大丈夫?!」
「っ・・・」
言った通りに青ざめた彼女に、今までの言い争いも忘れて手を伸ばして。
軽くよろめいた体を支えるつもりで肩に触れた。
つもりが、
咄嗟に身を逸らした彼女が接触を避けて後退して、口元を押さえたまま下を向く。
あれ?
なんか・・・
これも・・・・デジャブ。
「・・・っ・・千麻・・ちゃん?」
「っ・・名前・・・呼ばないで・・・」
「えっ?・・・あの・・・」
「・・・・・・・気持ち悪い、」
「・・・・」
「あなたに・・・今名前呼ばれるの嫌です・・・」
「っ・・・」
「その目で・・・見られるのも・・・無理・・・」
「・・・っ・・・ま・・さか・・さぁ・・・」
「・・・・・・・・・再発・・かも・・・」
「っーーーーーー!?」
ああ、苦く辛い日々の記憶の走馬灯。