夫婦ですが何か?Ⅱ
衝撃的な一言を口にした彼女は相変わらず口元を押さえて目を合わせない。
むしろ合わさないように視線を落として、これ以上寄ってくれるな。とばかりに後ろの扉に張り付いて。
あっ・・・完全に、
「さ・・・再発?」
それでも違っていてほしいと願望込めて、苦笑いでその声を零せば。
ウッと眉を顰めた彼女。
暗に今は俺の声にも嫌悪するという事か。
言葉より強烈な返しに絶句して、こうなっては距離を取らざるを得ない彼女との関係に失意のまま廊下に膝をつく。
「・・うっ・・・・はぁっ・・・別居・・でしょうか、」
「っ、無理っ!!」
「っ・・・吐くっ、近づかない・・で、・・・匂いも・・」
「ちょっと待って・・・・すっごいショックなんですけど・・・泣いていい?」
「泣きたいのは私です・・・・うっ・・本当に・・・無理・・・裸とか・・・すっごく嫌・・・」
「っ・・・・犯罪者スタイルまで復活・・・」
あれ?サングラスってあったっけ?
落ち込む頭でよぎったのはそんな事で、同時に手袋やその他もろもろも今から探すと思うと本気で涙が滲む。
夫婦なんですけど?
子供もいる夫婦で・・・、昨夜もがっつり愛し合ってた筈なんですけど?
嘆いてみても現状治しようのない彼女の症状。
むしろ再会した時よりも酷いんじゃないかと言うほど、俺に対しての拒絶反応が強い。
だって、
名前を呼ばれるのもって・・・、声にすら嫌悪って・・・。
「・・・ヘリウムガスでも用意した方がいい?・・・・【ハニー】」
「ドナル〇ダックみたいで可愛いですかね?・・・っう・・・」
「ごめん・・・なるべく黙っておく・・・・」
これは最悪的に悪化。
そう理解する彼女の現状に頭を抱えて、選択肢は無いと諦め少しでも症状の緩和を望んでその身をクローゼットに向けていく。
そんな後ろ姿に不意に投げかけられた言葉。
「・・・・拓篤の部屋に行きます」
「・・・・はっ?」
「っ・・・翠姫も・・まだそっちですから」
「・・・・戻ってくるんでしょ?」
「・・・・・・・・・今日は・・・戻らない方がいいのかもしれません」
「っ・・・ちょっと待って、そんなのーー」
「っ・・・・」
辛いんだね。
苦しいんだね・・・。
今は・・・・俺の存在が何よりも彼女を蝕むんだ。
思わず身を返して彼女に迫って声を響かせて。
瞬時に身を縮めた彼女の嫌悪を示す苦悶の表情と絡まない視線。
近寄れない、触れない。
今は・・・・距離を保つことが彼女に出来る唯一の優しさ・・か。