夫婦ですが何か?Ⅱ
Side 千麻
不快・・・。
込み上げる不快感に眉根を寄せて、ふらつきながら拓篤の部屋に入りこむ。
奥から翠姫の機嫌の良い声と拓篤のあやす声がして、僅かばかりに心は安堵し口の端をあげた。
ああ、でも・・・気持ち悪い。
口元を押さえて短い廊下を歩いて、リビングの扉を開くと翠姫に向けていた笑顔のまま振り返った拓篤。
でもすぐに口元の弧は消えて、一気に不安顔に様変わり。
「っ・・千麻?どうしたの?顔真っ青だよ?!」
「・・・・大丈夫。・・・・とは、違うか、・・・色々と、話すと長くて・・・」
「と、とにかく・・・座って。何か飲む?」
「・・・ビール」
「え、ええっ!?」
「冗談よ・・・、水頂戴」
自分なりに冗談を言う元気はあると示したつもりだった。
そのくらいしないと心配性な拓篤の方がその顔を青く染めあげて。
それでも現実不快感に満ちている体はまともに歩くのも辛いらしい。
ふらりとしながら室内に歩き進めると、立ち上がった拓篤がすぐに体を支えて私を座らせて。
足早にキッチンに行き水を取ってきた拓篤が心配そうに隣に座って顔を覗き込む。
「千麻?どうしたの?何があったの?」
「・・・・ちょっとね・・・・持病の再発だと思う、」
「じ、持病!?そんなのあったの!?」
「まぁ・・・ここ近年にちょっとね、」
「だ、大丈夫?まさか・・・命にかかわるとかじゃないよね?びょ、病名は?」
病名・・・・。
なんだ?
夫拒絶症?
だとしたら、
「そんな事で死んでたまるか・・・・」
「えっ?な、何?とりあえず大丈夫なの?」
「うん・・・、まぁ、後で彼も説明にくるかーー」
まさに。
言いかけたタイミング計ったように鳴り響いたチャイムは、多分彼の訪問だろう。
だとしたらきっとあの懐かしくも微笑ましくない犯罪者ルックで玄関に立っているのだろうと、予想して小さく困ったように笑う。
ああ、それにしても・・・・。
気持ち悪い。
困った・・・。
ここまで・・・・壊れているつもりはなかったのに。
彼を拒絶する程病んでいるつもりは。
まったく・・・最悪な持病を持ってしまった物だと、可笑しくないのに皮肉に笑って。
拓篤が玄関で彼と会話する声をぼんやりと耳に入れた。