夫婦ですが何か?Ⅱ
問いに言葉は返さず、軽く口の端をあげて返事とすると身を返す。
彼女も翠姫もいない自室に。
そうか、彼女がいないならあえてこの姿でいる必要もないのかと、玄関扉に手をかけて引いた瞬間。
「・・・僕は、」
「・・・・」
「情けないとは思ってないよ。・・・・・羨ましいとは思ってるけど」
「・・・・・羨ましい?」
「・・・・そんな風に、まだ必死に動けること。・・・千麻を無条件に好きでいていい権利を持ってる君が・・・羨ましい」
「・・・・・」
顔は・・・口元は笑っているけれど。
本心は、
悔しいんですね。
もし逆の立場なら・・・・俺は、
こんな風に作ったものであっても笑ったりできるのかな?
「・・・・」
ああ、違う。
必死で・・・していたから。
耐えて堪えて、
心では悔しくて悲しくて泣いていたのに、
それでも笑っていたから。
気がついた彼女が寄り添ってくれたんだ。
それが・・・・俺と千麻ちゃんの始まりだったね。
でも、
もう出来ないよ。
千麻ちゃんに対してはもう、
嘘ついて笑って手放したりなんてしないから。
「千麻ちゃんは・・・俺の運命の相手なんで」
「・・・・・」
「なんて・・・・、クサイセリフですけど。俺が言うと許される気がしませんか?」
「フッ・・・ハハッ、うん・・・やっぱり茜君はカッコイイやぁ・・・」
シリアスに決めて。
でもすぐに崩れた笑みで自分に突っ込みを入れると、拓篤さんも表情を崩して賞賛の言葉。
まるで俺が真のヒーローみたいに。
でも、俺から見たら充分拓篤さんもヒーローですよ。
拓篤さんの優しさは真似できない。
その一言一言にある救いの響きに誰もが癒されて。
俺なんかより・・・・ずっとずっと。
だから・・・千麻ちゃんも素直に好きで。
今も記憶に深く残るほど大切で、
今も強く信頼しているんですよ。
悔しいから言わないけれど。
お互いに複雑な関係に小さく笑って、それを挨拶代わりにその身を仕舞う。
ずっと掴んだままだった扉を開いて、薄暗い部屋に入りこむとフードを外す。
ガチャリと鍵を響かせて、靴の少ない玄関に視線を落とすと溜め息をついて。