夫婦ですが何か?Ⅱ




自分の知らない時間にそんな会話が成されていたなんて。


心臓が嫌な跳ね方をして、更に不安がよぎって焦りを見せる。


悪意の感覚のない紅ちゃんが他にどんなことを彼女に言ってしまったのか。


温度差が大きすぎる2人の会話。


紅ちゃんが何てことないと思って発した言葉でさえ、今の千麻ちゃんには致命傷になりかねないというのに。



「・・・・・他には・・・何か話したの?」


「何か・・・・話したっけ?・・・・・・私の知ってる昔の茜の事とか、・・・・虐めたくなるとかそんな・・・・。

あっ・・・、」


「・・・何?」


「茜ってさ、愛着ある物に【ちゃん】付けするの癖なの?」


「・・・・・・はっ?」


「ほら、愛着ある物ほど呼び捨てしないじゃない。ひーたんとかウサたんとか。私も紅ちゃんだし、奥さんも一緒よね?千麻ちゃん?」


「っ・・・・」



何であの瞬間に再発だったのか。


今更問題を見つけて不動になる。


こんな会話があったなんて知らなくて。


知らず知らずに自分が発した言葉が猛毒を孕んでいたのだと気がついてしまう。


呼ばれることに嫌悪した。


同じように愛着があるのだと示したかのように。


それに嫌悪した彼女の崩壊。



『呼ばれたくない・・・・』



そう言って馴染みのある呼び方を・・・俺を拒絶した彼女の裏にあった物。


これ・・・だったんだ。


思わず時すでに遅しなのに口元を押さえて、弾いた言葉の毒性に気がついて動揺する。


視点も定まらず、答えを探すように四方に動く自分の視線。


心臓が・・・・、




「でも、ちょっと驚いちゃったんだ」


「・・・えっ?」


「奥さん、」


「・・・・千麻ちゃんが・・・何?」



聞きたい。


でも聞きたくない。


両者の矛盾した感情が揺れて。


その答えに恐怖にも似た感情が浮上するのに、


相変わらず綺麗な作りの無表情がさらりとその答えを口にする。




「私に悪意があるのかって聞いてくるんだもん。『何で?』って驚いちゃった」


「・・・・・」




ねぇ、千麻ちゃん。


俺は分かるよ。


その瞬間さ、言った直後にさ・・・。


自分に嫌悪して傷ついて辛かったでしょ?



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