夫婦ですが何か?Ⅱ
「あっ・・・何これ?手作り?」
「・・・・」
不意に響いた彼女の声に、その対象を捉えようと視線を上げて。
彼女がまさに手を伸ばして膝に乗せた物を捉えて不動。
黒いべロアのウサギ。
俺と千麻ちゃんの・・・・、
「・・・・・・・触らないで、」
「えっ?」
「・・・・それは・・・・千麻ちゃんのだから触らないでっ、」
「・・・・茜?」
「・・・・・・・・・・・天然だって・・・知ってるけどさ。・・・・・・今も変わらず・・大好きだけどさ・・・」
大好きだよ。
大好きで、大好きで、・・・・・・愛には到達しない人。
確かに、綺麗で甘くて俺には優しいよ、
俺も自慢で、大好きで、過去の時間はずっと記憶に残ってて。
でも・・・でもね、千麻ちゃん。
「ここはね、もう俺の家じゃないんだよ紅ちゃんっ、
俺と千麻ちゃんの家で、千麻ちゃんがあって完璧な部屋だったんだ!」
「・・・・」
「部屋も家具も・・・・俺自身も、所有権は千麻ちゃんにあって、・・っ・・何でもかんでも簡単に・・・・昔みたいに触ったりしないでよっ、」
千麻ちゃんがいて当たり前の空間なんだよ。
もう俺はさ・・・・千麻ちゃんだけの物なのに。
でも、・・・だからこそ、
そう思っていたからこそ、
勝手に見られて触られて・・・悔しかったよね。
それでも必死に良い奥さんしようとしてくれて・・・。
全然、ダメな奥さんじゃないよ。
そんな千麻ちゃんを分かってて、分かってたのに・・・どこか過去の甘さを振りきれないでいた自分が馬鹿で。
ごめん。
言いきって、驚愕の表情を見せる彼女を捉えて緩々と勢いが引いていく。
感情任せの勢いと発言。
相も変わらず俺は・・・。
「・・・・・・・ごめん、・・・・いきなり、怒鳴って。・・・でも、本心だから。・・・・もう、・・・世話やいてもらう弟じゃなくて・・・奥さんと子供のいる大人だからさ・・・・」
「・・・・・」
「紅ちゃんの、可愛い弟じゃいられない。・・・・・・紅ちゃんに嫌われて見放されても・・・千麻ちゃんがいなくなるよりいい・・・」
「・・・・・・私を・・・嫌いになった?」
ようやくか細く吐きだされた言葉に視線を絡めて。
知ってるよ。
その目は・・・不安になってる時だよね。