夫婦ですが何か?Ⅱ
昔からね。
俺は紅ちゃんの人より分かりにくい感情の変化を捉えるのが得意なんだ。
人が見落とすそれも拾い上げて、それを自分だけの特別だと、特権だと思って自信に満ちて。
無表情だけども本当は色々と必死な彼女だって知ってたから、優しいって知ってたから傍にいて。
大好きだった。
懐いて、甘えて。
紅ちゃんがくれる物全てが甘くて心地よくて。
でも、もう・・・それを欲しがる子供じゃなくて。
それを今度は・・・好きな人に与えたい大人になったんだよ紅ちゃん。
「・・・・・嫌いになった?・・・よく分からないけど・・・茜を怒らせるような事したなら・・・・」
「・・・嫌いじゃないよ、・・・・むしろ、大好きだから困る。
大好きだから・・・大好きな人だから区切りが必要なんだ。・・・愛してる人との、」
決して嫌いじゃない。
そう意図として口元に弧を描いて見せて。
その効果か僅かに彼女の不安はその目から薄れたと思う。
でもお互いに、どこか『寂しい』という感情を浮かべて、一つの終わりに哀愁が漂って。
ベッドの上で静かに座っている彼女にゆっくりと近づくと、その視線を落として俯いた姿。
これは・・・・罪悪感に満ちている時。
不器用なんだ。
紅ちゃんはいつだって、感情を出すことを得意としない。
俯いた彼女を見下ろして数秒。
でもフッと口元に弧を描くとしゃがみ込んで彼女の顔を覗き込む。
無表情でも僅かに揺れのあるその目を見逃さない。
責めたいんじゃない。
彼女はありのままで、そんな彼女の実態を知っていながら未然に対応出来なかった俺の非。
スッと手を伸ばして彼女の膝の上のウサギを持ち上げて、至る所から確認しながら説明する。
「・・・・この子はね・・・【永遠】、」
「・・・・名前?」
「そ、俺が作った・・・、ううん、俺と千麻ちゃんが作った・・・俺たちの最初の子」
「子供?」
「・・・・紅ちゃんは海外だったし知らなかったよね。・・・・俺と千麻ちゃんの最初の子ね・・・産まれる前にダメになっちゃったんだ」
「・・っ・・・」
「他にも色々とあったけど、それがきっかけの一つで千麻ちゃんとは別れちゃって、・・・・でも、また繋ぎ合わせてくれたのもこの子で、」
「・・・・・」
「大切なんだぁ・・・・、千麻ちゃんも翠姫も・・・当たり前に溢れてるこの生活も。
全部全部・・・・永遠がいてくれたからある物で、
かけがえがなくて・・・幸せすぎるんだ・・・」
代わりのきかない、
たった一つでも欠けたら【当たり前】にならない。
当たり前を寄せて積み重ねることで、
出来上がる幸せが何よりも温かくて心地いい。
陽だまりみたいに。