夫婦ですが何か?Ⅱ
「悪妻でいいって言ったのはね、他人から見ての評価」
『おかしな事を。他人から見られるなら良妻の方が誇れるし自慢も出来るでしょうに』
「うん、でも、色々な人に自慢して見せびらかすよりもね、だったら悪妻の評価で、隠すように閉じ込めて、俺だけがその良さを知ってるのもなかなかいいものだなぁって、」
『っ・・・』
「俺にこんな格好させる元凶になった千麻ちゃんの発言と・・・独占欲と同じ理由だと思うけど?」
あっ、うっかり、
うっかり、名前を響かせてしまった。
そう気がついて、距離のある彼女の体調を伺うように目を細めて。
でも見た感じ手で口元を覆うとか、蹲る様な感じはなくて安堵の息を吐く。
多少、緩和したのだろうか?
そんな疑問を抱きながら彼女の様子を見つめていれば。
『そうですね。・・・・・確かに、もう【良妻】だとか【悪妻】だとかどうでもいい気がしてきました』
「・・・・そうなの?」
『勿論、その評価も重要で、無視できない部分でもあるんです。でも、それよりも重要な事があって、』
「・・・・重要?」
『・・・・・正直、【妻】という括りにうんざりしてきました』
衝撃的な一言に思わず携帯を落としそうになった。
言った彼女の表情も、まさにうんざりだと眉を顰めていて。
まさか【妻】やめます!なんて宣言しに来たのではないかと変な不安まで浮上したほど。
心臓が変な跳ね方をしている音が頭にまで響いて、ジワリと可笑しな汗まで滲んだ瞬間。
『時々でいいから・・・・ただの女に戻りたいんです』
「・・・・えっ?」
『夫婦になったからって・・・【妻】という生き物になったわけじゃないんです』
「えっと、・・・」
『【妻】は称号で、生涯続く仕事を担っただけで、勿論怠る事なく責任を持って貫くつもりですけど、』
「っ・・・・」
『休ませて・・・、』
懇願の様な響きだと感じて、哀願の様にも感じる。
とにかく、それを本心から願っている彼女の真剣な要求に、周りの雑音が聞こえなくなった。
ただ、彼女の声だけがクリアで。
『認めて、労って、甘えさせて・・・、』
「・・・・」
『・・・・馬鹿みたいですが、・・・私には時々でいいからそれが必要みたいなんです』
「・・・・千麻ちゃん、」
そんなさ、切なげに、苦しそうに、それでも無理して笑っているようにしなくても。
あえて・・・・口にしなくてもさ。
いくらでもするよ?