夫婦ですが何か?Ⅱ




「だいぶ、顔色がよくなりましたね」


「・・・・」



ガチャリと自宅の鍵を響かせた直後、追って耳に入った言葉に首を捻って。


絡んだのはさっきと変わらぬ新崎の笑み。


それでもさっきの様な嫌味は感じず、特に言葉を返さずに反応を待てば。



「先週までは見かけても青白く、フラフラとしておられたので。こうして顔色良く、私の悪戯な言葉遊びに切り返す姿を見ると安心します」


「【悪戯な言葉遊び】だという自覚はあったのですね」


「私流の好意の示し方という事で」



ニッと笑みを強め、そのまま扉を開いて中に消えていく姿を、半目開きで見送って。


私の周りはいつでも狡猾で言葉遊びの好きなS男に満ちていると感じる。


何でだ?


類は友を呼ぶという事なのか。


そうなってくると背後の存在の貴重な事。


確かめるように振り返った拓篤と言えば、目が合うなりふわりと笑って。


このフロアでの貴重価値。



「好きだわ」


「えっ、えええっ!?な、何いきなり!!何でいきなり告白されたの!?」


「いや、告白って言うか、元々感じている感情を口にしただけよ」



さらりと、特別な感情でなく好意を示しての表現だと告げれば、空笑いでその焦りを緩めていく姿。


そしてその分かりやすい反応の中の変化を見逃すはずもなく。


一番に浮上して見えたのは安堵。


特別な意味の【好き】の響きではない事に、安堵して口の端をあげた事を気がついている。


過去であるならどこか悲哀が混じっていた筈なのに。


拓篤の心も変化している。


私への執着が薄れるほど、他の何かにそれは移行して。


寂しいけれど、それは凄く良い事で。


私が出来ることは許される範囲で見守る事だけ。




ようやく部屋の中にその身を移動させ、眠っている翠姫をベビーベッドに運んでもらう。


ああ、きっと、このまま朝までコースだろう。


寝つきの良い愛娘は夕方に眠ると起きることなく朝まで眠る事が多々あって。


その代わり早朝に起きて朝食をねだる物だから困ってしまう。


それでも、今夜としては好都合かと、大人の事情的に満足して口の端をあげると。



「翠姫ちゃんは可愛いよね」


「・・・・あげないわよ」


「ええっ!?ぼ、僕ぅっ、ロ、ロリコンとかじゃあ!!」


「一瞬、とうとうそっちに目覚めたのかと思ったわ」


「ぼ、僕は、確かに人とは違う趣味の世界持ってるけど・・・好きになる人は年相応の女の人っていうか・・・」



紅さんみたいな?


と、突っ込んだら、死ぬほど取り乱して否定しそうだから言わないでおこう。


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