夫婦ですが何か?Ⅱ





拓篤も自分の部屋に帰宅して、窓からさす明かりが自然な物から人工的な物へと切り替わって。


ベランダから生暖かい夕刻の風を感じながら、平常より賑やかな音を耳に流して下界を見下ろす。


小さく捉える人々が花火会場に向かって歩いて行くのを見下ろして、女の子の大幅は浴衣でその姿を着飾っているように見える。


やはり少しは出店にも興味を抱いて、来年こそは翠姫にも浴衣を着せて土手に出向こうと小さく決意。


そして思考が治まればリアルな事態に溜め息が出てしまうのだ。


チラリとリビングの時間を確認して、なかなか帰らぬ夫に何度目かの溜め息。


すぐに帰ると言ったくせに。


そんな悪態を心に、お門違いにも時計を睨みつけて再びマンションの下界を見下ろす。




「ただいまぁ、」




玄関の開錠音と共に響いた声に、安堵と同時に今までの不満が浮上して。


眉根を寄せその姿を捉えようと玄関に突き進んで、結果・・・呆然。


でも、それは彼もほぼ同時に私を捉えて同じような表情で固まって。


お互いに対面した相手に驚愕して不動になる事数秒。



「えっと・・・・何ですか?その浮れた帰宅姿は?」


「えっと、それなら俺も。どうしたの?さも俺に『食べて』と言わんばかりの妖艶浴衣姿」


「・・・・花火大会ですから気分で着ただけです。むしろあなたの方が・・・」



そう言って捉えた姿を上から下まで確認して目を細めて。


上から語れば、翠姫の好きなキャラのお面を頭に、片手には何かの景品なのか、馬鹿でかいウサギのぬいぐるみと水風船に金魚が一匹の袋。


もう片方の手にはわたあめ、りんご飴、焼きそばにたこ焼き、チョコバナナ。


確実に祭りを満喫してきた後の様な姿に、怒りを通り越して感心してしまう。



「よく・・・制覇したように持ち帰ってきましたね」


「うん、凄いでしょ」


「いや、感心はしてますが褒めてません。ちなみに何故金魚は一匹ですか?」


「いやぁ、ものの見事に逃げられて、屋台のおじさんが同情して一匹くれた」


「・・・・なに・・・一人で満喫して帰ってきてるんですか?行きたいの我慢してる私へのあてつけですか?」


「だから、行きたいの我慢してる千麻ちゃんに少しでも祭り気分を持ち帰りたいと思って頑張ってきたんじゃん」


「・・・・」


「ね?祭りの定番品いっぱい買って帰ってきたからさ、ベランダに並べて花火見よっか?」



狡い。


帰宅を待ってモヤモヤしていたのに、そんな屈託のない笑みで私の為なんて言われたら。



「・・・・・おかえりダーリン」


「ただいまハ・・」



失敗。


ハニーの【ニ】をうっかり飲みこんで、同時に怒っていた感情も飲みこみ。


私も甘くなってしまったものだ。


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