夫婦ですが何か?Ⅱ
今は数少ない在庫を使うべき時だろうと、惜しみなく甘ったるい出迎えを再現して唇を重ねて。
少しばかりしっとりとその感触を確かめると、つま先立ちだった足をしっかりと床につけていく。
そうして絡むのは複雑な笑みのグリーンアイ。
「何かご不満でも?」
「うん、せっかく理想的出迎えだったのに、両手が塞がってて抱きしめられなかった」
「それは私には好都合でした」
「ええ~、だって浴衣じゃん?絶対に襲ってくれのフラグだよね?ってか、もう脱がすことしか頭にないんだけど」
「相変わらず脳内が色とりどりの花で満ちてますね」
「どうする?花火の前に軽く一回いっとく?」
「花火と一緒に命散らせて差し上げましょうか?」
どんだけ軽く、色気のない誘い方だよ。
呆れて腕を組みながら睨み上げても、どうやら滅多にない私の浴衣姿に脳内が浮れているらしい彼には暖簾に腕押し。
へラッと笑うその顔には『可愛い』という文字がくっきりはっきり見えるような。
溜め息をつきつつも、彼の両手を拘束している品々を少しずつ自分にも移行して、半分ほど移すとリビングに足を向け廊下を歩いて。
でもすぐに立ち止まって振り返る事になる。
勿論、不愉快な表情で。
彼の手を自由になんてするんじゃなかったと後悔するように、悪戯に指先で触れられた項(うなじ)を押さえて振り返って。
きつく睨んでみても、私に触れたままに指先を宙に留めたまま、にっこりと笑ってくる彼に更に眉根を寄せて。
「何ですか?」
「ん?うなじが触ってって、」
「言ってません」
「ほら、目の前にご馳走があったら思わずつまみ食いしたくなるじゃない?」
「あなたはつまみ食いで留まらず、本気で完食するでしょう。それでいつぞやお父上からしばかれた記憶があったのはどこの誰でしたでしょうか?」
「だって・・・、美味しそうなんだもん」
言葉を示すように、彼の唇の上を赤い舌が這うのを捉えて、下手な男なら気色悪いとさえ感じそうなのに。
悔しいかなこの男はそれをやってのけ許される容姿を持っているのだ。
一般的女子なら発狂でもするのだろうか?
でも、
今更そんな物に乗るほどあなたの上辺に惚れ込んでません。