夫婦ですが何か?Ⅱ
触れてきた手をすぐに剥がして彼を振り返ると、悪戯が成功しなかった子供のように不貞腐れた彼と視線が絡む。
「何、調子に乗って発情してるんですか?」
「だって・・・発情しちゃってるんですよ。千麻ちゃんだって理由分かってるくせに」
「まぁ、ご無沙汰ですからね」
「悪阻良くなってよかったけど」
ギュッと抱きしめ肩に顔を埋める彼に、少しばかり胸がキュッと締め付けられ口の端をあげる。
同時に胸に触れようとしていた手が静かに下降して、場所を変え腹部に触れると柔らかく撫でて。
その感覚に自分も身を預け力が抜ける。
「・・・・可愛いけど・・・帯、苦しくない?」
「緩めにしてあるので大丈夫です。それを言ったら昔の人はみんな着物だったのですよ?」
「そっか」
納得したような声を響かせて、お腹の中の存在を確かめるように撫でる仕草に優しさを感じて。
同時に思い出したように花火にも意識を走らせていると。
「・・・・・健診は?どうだった?順調?」
「この子は順調です。私は・・・・食べて太って怒られるくらいに体重増加しろと言われました」
「ははっ、じゃあほら、食べなきゃ。まずはバナナいっとく?」
ニッと意地悪に笑って差し出されたチョコバナナ。
それを睨んでから彼も睨んで、でもすぐに上回る悪ふざけの浮上に躊躇いなく受け取り口の端を上げてみせる。
「・・・・・ご希望とあらば、」
「・・・・っ・・エッロ・・・」
あまりにしつこくそのネタ振りをする物だから、あえて逆にその悪ふざけに乗って仕返し。
何のこっちゃない。
そこまで恥を捨てどエロイ事をしたわけでなく、付着しているチョコを下から舐め取ってから口に含んだだけ。
それを淡々とした表情でさらりとやってのけ、確かめるように上目遣いで彼を見てから歯を立て飲みこんで。
そして何食わぬ顔で残りは普通に食べ、ニッと口の端をあげて彼を見上げて。
その間、見世物を見るかのようにポカンと私を見つめていた彼の顔は僅かばかりに赤い。
馬鹿正直ねダーリン。
「ご馳走様でした。大変美味しくいただきました」
「っ・・・いや、なんか、こっちがご馳走様?ってか・・・、違う、『いただきます』って言いたい」
「一体何の事でしょう?」
「酷いよ千麻ちゃん!こんだけ煽っておいて」
「嗾けたのはあなたでしょう?私はわざわざ期待に応えてそれを再現したまでの事ですから」
「絶対に俺が悶絶するって知っててやったでしょ!?」
「あ、花火綺麗ですよ」
「千麻ちゃぁん!?」
当たり前でしょう。
その顔が見たくて狙ってやったに決まってる。