夫婦ですが何か?Ⅱ




必然の様にそっと腹部を撫でる手の感触や温もりにも安堵して、彼の与えてくる抱擁を抗う事なく受け入れて。


肩に置かれた彼の頭に軽く自分の頭を寄せていく。



「・・・・花火、綺麗だねぇ」


「来年は・・・、マンションでなく土手に行きませんか?」


「いいけど、結構人凄いよ?俺も今日だいぶ苦労したし」


「それも醍醐味かと、」


「その時は浴衣禁止ね」


「・・・・何故ですか?」


「こんな誘惑的な姿は俺以外に見せたらいけません」


「・・・・馬鹿ですね。30過ぎた子連れの女に誘惑されてくれるのはあなたくらいですよ」


「また、そうやって無自覚な・・・・・、って、あれ?」



ああ、気がついたか微妙な言葉のニュアンスに。


また私の発言に【無自覚】だと不満げに詰ろうとしたであろう彼が、追いついた言葉の理解に寄せていた眉を離して。


一瞬思考の間をあけた後に確かめるように私を覗き込んで。



「何これ?」


「はい?」


「都合良しに取っていいの?」


「何の事でしょうか?」


「えっと・・・【誘惑】・・・してくれてたって事?」



勿論です。


でなければ、わざわざ浴衣なんか面倒な物着たりしませんから。


とは、言いませんが。


でもあえて、目を細め含み笑いで視線を花火に戻していく。


それだけで彼は自分の都合良しに、私の都合良しに答えを出してくれる人だから。



「千麻ちゃん!」



ほら・・・ね。



「苦しいです」


「ラブ・・・」


「鬱陶しいくらい知ってます」



感極まってきつく抱きしめてきた彼に非難の言葉を返して、そしてまた一つ花火が区切りに差し掛かって。


煙を残して濃紺の空に戻ったそれを見つめ、指折り数えて口の端をあげる。


さぁ、そろそろだろうか。



「ダー・・・」



満を持して。


そんなタイミングに呼びかけながら振り返れば、見事言葉を飲みこむように唇を塞がれて。


瞬時に直前のやり取りが間違いだったと後悔に染まる。


都合良しに歓喜した彼が今日までの欲求不満を爆発させたらしく、触れてすぐに濃密に唇を重ね舌を絡めて。


手摺りに私の体を押しつけ、指先を太腿に這わせながら浴衣の袷を探して。


発情期男め。


そんな言葉で心で詰って、チラリと夜空を確認してからその体を引き剥がしにかかって胸を押す。


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