夫婦ですが何か?Ⅱ



それでも欲求に忠実に、そう簡単に私を解放する気のない彼と顔の距離だけは何とか離して。


不満顔の彼と至近距離で見つめあっての押し問答。



「誘惑してたって言ったじゃん」


「私はそんな事言ってません」


「思いっきりそういう含みで笑ってたじゃん!」


「都合良しな解釈で暴走しないでください!」


「都合良し!?また俺が悪いの!?俺の腕の中では従順になるって言ってたじゃん!!」


「こんな強引に抱かれた瞬間は無効です!!」



あっ、マズイ。


失敗。


これは性質悪く・・・・いじけた。


実際、自分も抗ったりしなかったくせに、彼の抱擁を【強引】だと言いきって。


悪意はなく咄嗟の切り返しの言葉であったけれど、その効果は抜群だったらしい。


それも、・・・・相当お預け期間も効いていたな。


見事、不愉快を示し舌打ちした彼が、パッとその手を離すと背中を向ける。


そして不貞腐れて部屋に引き込もうとする彼に、逆に焦って背中を掴んで引き止めて。


服が伸びるほどしっかり握った引き止めに、当然不機嫌な声で反応が返される。



「何?」


「・・・行かれては困るというか、」


「何で?」


「さ、寂しいわダーリン、」


「棒読みで精一杯の演技どうも」


「っ・・・茜!!」


「お得意の逆切れ?」




あああああ、面倒な!!


こんな会話の合間も部屋に戻ろうと私の手を振りほどこうとしていて、不貞腐れたその顔は私に絶対向けてこない。


こうなってしまうと本当に厄介なこの男。


普段なら追う事もなく、面倒だと放置するけども。


今この瞬間は困るのだ。


この瞬間は、


この瞬間は・・・何より、




「っ・・・・聞けっ!!」




本当・・・、


どっちが【強引】なんだか。


埒の開かない些細な喧嘩に、もう猶予はないと強引な力任せに彼を手摺りに引き戻して。


さすがにここまでの馬鹿力で引き戻されると思っていなかった彼が、軽く強めに背中を打ったと見受けられる。


それを示すように一瞬は驚愕に染まっていた顔が、非難するように私を睨んで。


でも、すぐにその表情も掻き消された。


私が空を指さす事によって。


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