夫婦ですが何か?Ⅱ
ーーーーNEXT MORNINGーーーー
巡りくる朝は相変わらず同じだ。
契約結婚だろうが、愛ある再婚だろうが。
誰よりも早く睡魔から逃れ、乱れた髪を掻き揚げながら体を起こす。
そうして見下ろす形になる夫である彼の寝顔を微睡む眼差しで見つめ小さく口の端を上げる。
無防備な朝。
アルコール交じりの濃密な夜を明かしたまま就寝した体は扇情さは薄れた生身の肌を晒す。
若い。
そう思って不意に彼の腕を指先でなぞってハリの確認。
そしてデスクワークの割にそこそこ引き締まった筋肉に羨ましいとさえ思う。
若いから?
でも・・・考えてみたらもう27歳、若いと言うほどの若さでもないのだろうかと自分の投げた疑問で首を傾げた。
それでも32になる私よりは確実に若い男だと納得するとようやくベッドを降りた。
途中脱ぎっぱなしだった衣服をかき集め、もう定着している部屋着にしている彼のパーカーをばさりと被る。
そのまま歩きながら適当に長い髪に手櫛を通しながらくるりとまとめてクリップで留めて、愛娘の寝顔を確認すると寝室を後にする。
静かに扉を閉めくるりと玄関に足を向けて歩いて行き、しっかりダブルロックとガードをしてある玄関を開錠して。
躊躇う事なく扉を開けて、部屋着だとかすっぴんだとかいう事は特別気にせずその身を出した。
さて、何か特別なニュースでもあるか?と手にした新聞のトップ面を眺めていると。
「・・・・おはようございます」
響いた声にさほど驚かず、むしろ声がどちらから響いたかも把握済みで首をひねると。
「おはようございます。・・・毎日ご苦労様です」
そう切り返し見つめた姿はもう見慣れた隣人の姿で。
歳は私よりやや若い筈。
でも、彼より少し上の男の人。
どちらかと言えば内向的に感じるその人は言葉数も少ないけれどこうして社会的マナーのように挨拶は交わす。
私の体内時計が正確なら、彼のそれも正確なのだろう。
毎朝ランニングに出かけ戻ってくる時間帯が丁度私が起床して新聞を取りにでる時間帯と被るのだ。
だからこそ、毎朝と言っていい程顔は合わせてこうして微々たる挨拶は交わす。
でも、その程度。
彼も特別会話を続ける気はなく、すぐに自宅のカギを開錠すると中に入るのだ。