勝手に古今和歌集
………と自分に必死に言い聞かせてみたものの。




俺は執念深いことに、窓から外を見下ろして、夏木さんとサトシが連れ立って帰っていくのをじっと見つめてしまう。





もちろん声は聞こえないので、どんな会話をしているのかは分からないけど。





夏木さんがサトシの背中を遠慮なく叩いたり、ときどき笑顔でサトシを見上げているのが分かると、




俺の胸はずきりと痛んだ。




夏木さんは、おれにあんな笑顔を見せてくれるだろうか?



俺と話すときの夏木さんは、なんだかいつも落ち着かなさげに見える。




サトシとは幼馴染みだから気心が知れてるってだけかもしれないけど………




あんなふうに屈託なく笑う姿を見せられると、夏木さんは俺をどう思っているのか、不安でしかたがなくなってきた。





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