勝手に古今和歌集
「………お前、まさか。


セイレーン……とかいうやつじゃないだろうな」






わたしの歌声を聞いた彼は、なぜか訝しげな顔で訊ねてきた。







「え? なぁに? セイレーンって。


なんのおはなし?」






「いや、気にしないでくれ。


まぁ、こんなのほほんとしたやつがセイレーンなはずないか………」






彼はくくっと笑って、わたしの頭をくしゃくしゃと撫でる。





わたしはやっぱり嬉しくて、さらに大きな声で歌を歌った。






はるか頭上の月から溢れる光が、わたしたちと海を照らしていた。






< 92 / 93 >

この作品をシェア

pagetop