にせパパ、はじめました。
「………最初は、不安だったの。ただただ」
コトンとコーヒーを置き、話し出す西城。
「不安て…………ここに来るのが?」
「うん。来るのがって言うか、人と会うのが怖くて………私、極度の人見知りだから」
人見知り…?
「じゃあ何で、こんな場所に来たんだ?もっと…人が来ない場所なんかいっぱいあっただろ?」
そう俺が言うと、西城は少しだけ顔を俯かせて
「知ってる場所が、ここしかなくて…」と言った。
「………小さい時に、交通事故にあって、それから…親が過保護になっちゃったの。異常なぐらい。それで………今思えば絶対言ったらダメだったんだけど、昨日この学校に来て、靴下だけ買うのを忘れてたから、買いに行きたいって……それで」
「…………こうなったと」
「……はは、もうなんなんだろ……アホみたいでしょ?笑っちゃうよね」
ごめんね、と呟いて、息を吐く。
すると西城は冬をチラッと見て
「…………ねぇ、冬……ちゃんだっけ?えっと…………その、私が、ママっていうのは、どういうことなの…?」
そんなおどおどしなくても……
「…………んあ……?」
しかも冬寝てたのか、静かだなと思ったら。
「冬ちゃんって…如月くんの………?」
「ち、違うんだ、ちょっと…色々あってな………」
やっぱり気になるよな、そりゃ。
「パパは冬のパパだよ!!大好きだよ!!」ニコッ
「………如月くん?」
「違うんだってああもう…………」